しかし旧労働組合法第一条第二項の規定は同条第一項の目的達成のためにした正当な行為についてのみ刑法第三五条の適用を認めたに過ぎず勤労者の団体交渉においても刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまでその適用があることを定めたものでないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三一九号、同二四年五月一八日大法廷判決、判例集三巻六号七七二頁以下参照)とするところであるから原判決には所論のような違法はない。
旧労働組合法第一条第二項の規定の趣旨
判旨
団体交渉に伴う行為であっても、刑法上の暴行罪や脅迫罪に該当する暴力の行使が行われた場合には、労働組合法による刑事上の免責は認められず、刑法35条の正当業務行為として違法性が阻却されることはない。
問題の所在(論点)
団体交渉等の労働運動に伴って行われた暴行・脅迫等の暴力行為について、労働組合法1条2項及び刑法35条(正当業務行為)による違法性阻却が認められるか。また、被告人にとって過重な量刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
労働組合法1条2項(旧法含む)による刑事免責の規定は、同条1項の目的達成のためにされた「正当な行為」についてのみ刑法35条の適用を認めるものである。したがって、勤労者の団体交渉の際であっても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる暴力の行使が行われた場合には、その行為の正当性は否定され、違法性は阻却されない。
重要事実
被告人らは、団体交渉の過程において、公務執行妨害罪の実行行為を共謀・教唆した。その実行行為の内容は暴力の行使に該当するものであったが、被告人側は労働組合法上の正当な活動として刑事免責を主張し、また量刑が過重であり憲法36条の「残虐な刑罰」に当たると主張して上告した。
あてはめ
本件における被告人らの共謀・教唆に基づく実行行為は、客観的に暴力の行使に該当すると認定される。労働組合法が保護する正当な行為の範囲は、憲法及び法の秩序内において認められるものであり、暴行・脅迫といった暴力的な手段を用いることまでを許容する趣旨ではない。したがって、本件行為は正当な業務行為の範囲を逸脱しており、違法性は阻却されない。また、憲法36条の「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的肉体的苦痛を内容とする人道上残酷な刑罰を指し、単に量刑が被告人にとって過重であるというだけではこれに当たらない。
結論
暴力の行使を伴う行為は労働組合法上の正当な行為とはいえず、刑法35条による違法性阻却は認められない。また、単なる量刑不当は憲法36条違反を構成しない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
労働刑事事件における「正当な争議行為」の限界を示す基本的判例。手段の相当性を欠く暴力行為が刑事免責の対象外であることを明確にしており、答案上は刑法35条の正当業務行為の限界を論じる際の規範として利用できる。
事件番号: 昭和26(れ)1325 / 裁判年月日: 昭和26年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】労働組合法1条2項による刑罰不適用は、同条1項の目的を達成するための正当な行為にのみ認められる。団体交渉において脅迫罪に該当するような正当な範囲を逸脱した行為については、同項の適用はない。 第1 事案の概要:被告人らは、労働組合の団体交渉の場において、交渉相手に対して脅迫罪に該当する行為を行った。…
事件番号: 昭和28(あ)2695 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法95条1項の公務執行妨害罪における「暴行」は、公務員に対し直接加えられるものであることを要せず、公務員に向けられた有形力の行使であれば間接的であっても同罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人らは、公務員の職務執行に際し暴行を及ぼしたとして公務執行妨害罪等で起訴された。弁護人は、当該暴行が公務…