判旨
判決の証拠として採用された被害届について、裁判所が適法な証拠調べの手続を経ていない場合には、当該事実に係る認定は違法であり、併合罪として処断された全部分の破棄を免れない。
問題の所在(論点)
裁判所が適法な証拠調べ手続を経ていない証拠を事実認定の基礎とした場合、当該判決の効力、及び併合罪として処断された他の事実への影響はどうなるか。
規範
裁判所が事実認定の基礎とする証拠は、公判期日において適法な証拠調べの手続を経たものでなければならない。証拠調べを経ていない証拠に基づき罪となるべき事実を認定することは、証拠裁判主義(刑事訴訟法317条)に反し、判決に影響を及ぼすべき法令の違反となる。
重要事実
被告人Aは、第一乃至第四事実について併合罪として起訴され、原審において有罪判決を受けた。しかし、第四事実の断罪証拠とされた被害者B提出の横領被害届について、原審の記録を調査したところ、裁判所が何ら証拠調べを行った形跡が認められなかった。
あてはめ
本件において、原判決は第四事実を認定するに際し、証拠調べの手続を経ていない横領被害届を断罪証拠としている。これは適法な証拠調べを欠く証拠によって事実を確定したものであり、証拠裁判主義に違反する。また、原判決はこの第四事実を第一乃至第三事実と併合罪として処断しているため、第四事実に関する証拠調べの懈怠は、判決の被告人に関する部分全体に影響を及ぼす重大な違法といえる。
結論
証拠調べを経ていない証拠を基礎として事実を認定した原判決は違法であり、被告人に関する部分は全部破棄を免れない。したがって、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
証拠裁判主義の徹底を求める判例であり、実務上、証拠リストと証拠調べ実施の有無の確認が不可欠であることを示す。答案上は、伝聞法則等の証拠能力の議論以前に、適法な証拠調べ手続(刑訴法298条以下)が事実認定の前提条件であることを論じる際に参照すべき基礎的な判例である。
事件番号: 昭和24(れ)2215 / 裁判年月日: 昭和24年12月26日 / 結論: 棄却
論旨は、第二審判決が證據として引用している被害者Aの盗難届は本件記録中に編綴せられていないから、右の判決は虚無の證據を斷罪の資に供したものであると非難しているが、記録を調べてみると右の盗難届については、第二審公判廷において適法な證據調がなされており、裁判長は被告人に對してこれを讀聞かせ又はその要旨を告げて意見辯解の有無…