原審は被告人の原審公判廷の供述及びその態度並びに訴訟記録その他諸般の情況に照らし被告人の精神状態に所論のような異常がないと判断しているのである。そうして事実審裁判所が被告人の犯行当時における精神状態について疑のない程度にその認識を得た場合にはわざわざ専門家に鑑定させてその結果を判断の資料に供する必要はないのである。(昭和二三年(れ)第一、四二二号同二四年二月八日第二小法廷判決参照)。
被告人の精神状態について異常の有無の判断と鑑定の要否
旧刑訴法219条,旧刑訴法337条
判旨
死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に該当せず、裁判所が被告人の犯行時の精神状態に疑いがないと判断した場合には、専門家による鑑定を経る必要はない。
問題の所在(論点)
1.死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たり違憲か。2.被告人の精神状態について、専門家による精神鑑定を行わずに責任能力等を判断することは許されるか(職権証拠調べの要否)。
規範
1.死刑は憲法36条にいう「残虐な刑罰」には当たらない。2.事実審裁判所が被告人の犯行当時における精神状態について、訴訟記録や供述、公判廷での態度等に基づき、疑いのない程度に認識を得た場合には、専門家による鑑定を証拠資料として用いる必要はない。
重要事実
被告人は殺人等の罪により死刑判決を受けた。弁護人は、死刑は憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」であること、また、被告人の精神状態に異常がある可能性があるにもかかわらず、原審が専門家の精神鑑定を行わずに有罪および死刑を宣告したことの違法を主張して上告した。
あてはめ
1.死刑が残虐な刑罰に当たらないことは確立した判例であり、本件でも変更の必要はない。2.被告人の精神状態に関し、原審は被告人の公判廷での供述、態度、訴訟記録等の諸般の事情から、精神状態に異常がないと判断している。このように裁判所が確信を得た場合は、鑑定を要しないとする前例に照らし、精神鑑定を行わなかった原審の判断は経験則に反せず、正当である。
結論
1.死刑制度は憲法36条に違反しない。2.裁判所が精神状態に疑いがないと認識した以上、精神鑑定を実施しなかったとしても訴訟手続上の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
憲法36条に関するリーディングケース(最大判昭23.3.12)を踏襲するものである。また、刑事訴訟実務において、責任能力の判断のために精神鑑定を命じるか否かは裁判所の裁量に属し、公判廷での態度等から判断可能であれば鑑定不要とする判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和26(あ)3176 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の精神障害の有無は、事実審裁判所が諸般の資料により適正に決すべき職権事項であり、必ずしも常に専門家による鑑定を要するものではない。 第1 事案の概要:被告人が精神障害の状態にあったか否かが問題となった事案。弁護人は、精神障害の有無の判断において専門家の鑑定を経なかったことが憲法37条1項に違…
事件番号: 昭和44(あ)1212 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
検察官が控訴を申し立て第一審判決の刑より重い刑の判決を求めることが憲法三九条に違反しないことは、昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決(刑集四巻九号一八〇五頁)の判示するとおりであり、検察官が死刑の判決を求める場合もその例外とは解されない。