判旨
文書に契印がない場合であっても、筆跡、墨色、内容によって文書の連続性が認められるのであれば、その一事をもって直ちに証拠能力が否定されることはない。
問題の所在(論点)
書面に契印がないことが、直ちにその証拠能力を否定する法的根拠となるか。また、文書の連続性が認められる場合の証拠能力の成否が問題となる。
規範
公文書等における契印の欠如は、直ちに当該文書の証拠能力を否定する事由にはならない。文書の成立の真正や一連性については、筆跡、墨色、記載内容といった外形的事態および実質的関連性を総合して判断すべきであり、これらの要素から文書の連続性が認められる場合には、証拠としての適格性を有する。
重要事実
被告人が匕首で被害者を刺傷した事件において、証拠として提出された「電話聴取書」に契印がなかった。弁護人は、契印の欠如を理由に当該書面の証拠能力を争い、原審の証拠採用には違法があると主張して上告した。なお、本件は刑事訴訟法施行法2条により旧刑事訴訟法および刑訴応急措置法が適用される事案であった。
あてはめ
本件の電話聴取書には、確かに契印を欠く不備が認められる。しかし、当該書面の筆跡や墨色、および記載されている内容を検討すると、これらが一連の経過を記録したものであるという文書の連続性を十分に認めることができる。また、原審の公判期日において適法な証拠調べが行われており、被告人側からも供述者の尋問請求等の異議はなされていない。したがって、契印がないという形式的不備のみをもって証拠能力を否定することはできない。
結論
書面に契印がない場合でも、筆跡や内容等から文書の連続性が認められる限り、証拠能力は否定されない。
実務上の射程
本判決は旧法下の事案であるが、書面の形式的不備(契印漏れ等)が直ちに証拠能力の喪失を意味しないという判断枠組みは、現行法下での書面(実況見分調書や供述調書等)の証拠能力を検討する際にも、その連続性や真正を補完的に説明する理屈として活用できる。ただし、現代の実務では作成手続の厳格性がより重視されるため、作成過程に重大な疑義が生じないことが前提となる。
事件番号: 昭和25(れ)1929 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
被告人に甲、乙両弁護人がある場合、公判調書に甲弁護人は別紙弁論要旨に基いて弁論をなしたと記載してあるのに、同公判調書の末尾に編綴してある同弁護人の弁論要旨には相被告人の弁論のみ記載してあつて、直接被告人の弁論に触れた事項が記載してなくても、右公判調書によれば乙弁護人が甲弁護人とともに同公判に出廷し、被告人のために詳細な…