原判決が右の調書等のみで判示行為を被告会社の業務行為と認定したことを非難しているけれども、本人の自白には犯罪事実の全部に亘つてその補強証拠を必要とするものではない(昭和二二年(れ)第一五三号同二三年六月九日最高裁判所大法廷判決参照)から、会社の業務行為であるか否かというような犯罪の一部分について本人の自白のみでこれを認定したからとて違法ではない。のみならず本件の場合には三名の共同被告人がそれぞれ会社の業務行為であることを供述しているのであるから、それ等は相互に補強証拠となつているのである(昭和二三年(れ)第一一二号同年七月一四日最高裁判所大法廷判決参照)。
一、犯罪事実の一部について被告人の自白だけで認定することの適否 一、共同被告人の供述と補強証拠
憲法38条3項,刑訴応急措置法10条3項
判旨
警察官による不当な身柄拘束等の違法な措置があったとしても、その後に作成された供述調書等が自白の任意性を欠くものでない限り、当然に証拠能力が否定されるものではない。また、自白の補強証拠は犯罪事実の全部について必要ではなく、共同被告人の供述も補強証拠となり得る。
問題の所在(論点)
捜査段階における不当な身柄拘束等の違法な措置が、その後の手続や証拠の許容性に及ぼす影響、および自白の補強法則の適用範囲(特に業務性の認定や共同被告人の供述の補強証拠適格)が問題となった。
規範
1.先行する捜査手続に不法な措置があったとしても、その後の手続がすべて違法となるわけではなく、当該不法な措置により作成された証拠が採用されていない限り、直ちに判決を違法とする理由にはならない。2.自白の証拠能力については、強制に基づく自白と認められない限り、これを証拠として採用することができる。3.自白の補強証拠は、犯罪事実の全部にわたって必要ではなく、犯罪の一部(業務性等)を自白のみで認定することも許される。また、共同被告人の供述は相互に補強証拠となり得る。
重要事実
事件番号: 昭和26(れ)841 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判で供述した内容だけでは自白が強制によるものとは認められず、証拠採用は適法である。また、被告人側の証人申請を却下することは裁判所の裁量に属し、憲法37条に反しない。 第1 事案の概要:被告人Aが原審公判において、自白が強制によるものである旨の供述を行った。また、被告人側は証人申請を行った…
被告人らは、警察官による不法勾留、監禁、その他違法の措置を受けたと主張した。しかし、原判決は警察官による調書を証拠として採用しておらず、証拠とされた検察事務官および検事の供述調書が作成された際、被告人らは拘禁されていないか、あるいは適法な逮捕手続を経た後であった。また、これらの供述について、強制に基づく自白であると認めるべき証跡は存在しなかった。さらに、会社の業務行為であるという認定に関し、共同被告人3名がそれぞれ同様の供述を行っていた。
あてはめ
まず、警察における不法な措置があったとしても、原判決は警察作成の調書を採用していないため、判決の違法事由とはならない。次に、検察段階での調書は、不法な監禁等の事実が認められない状況下や、適法な逮捕後の手続において作成されており、強制に基づく自白とはいえないから、証拠能力が認められる。最後に、犯罪の一部である「会社の業務行為」については、本人の自白のみで認定しても補強法則に反しない。本件では共同被告人の供述も存在し、これらが相互に補強証拠として機能しているため、事実認定に違法はない。
結論
被告人らの上告を棄却する。警察段階の違法は、任意性に疑いのない検察段階の調書の証拠能力を当然に否定せず、また、共同被告人の供述を補強証拠として犯罪事実を認定することは適法である。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則が確立する前の古い判例であるが、「先行手続の違法が後の手続に及ぼす影響」という文脈で言及され得る。現在の実務・学説(違法承継論)では、違法の程度や因果関係をより厳格に判断するが、自白の任意性と補強証拠の範囲(共同被告人の供述の補強証拠適格)については、依然として実務上の基礎的な理解を示すものとして意義がある。
事件番号: 昭和25(あ)334 / 裁判年月日: 昭和28年12月17日 / 結論: 棄却
第一審の裁判官が職権を以て所論証人を喚問する旨の決定をするについて検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴かなかつたことは所論のとおりであるが、検察官及び被告人又は弁護人はこれに対し何等異議の申立をした形跡はなく、却つて、右証人尋問の際、検察官及び弁護人は自ら進んで右証人の尋問をもしていることが認められるのであるから、前記…
事件番号: 昭和26(れ)2301 / 裁判年月日: 昭和27年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が記載された聴取書や訊問調書について、強制、拷問または脅迫によるものであると認めるに足りる資料がない場合には、憲法38条2項に反するとの主張は理由がない。 第1 事案の概要:被告人の自白が記載された各聴取書および訊問調書について、弁護人はこれらが強制、拷問または脅迫によって得られたもの…
事件番号: 昭和26(れ)2396 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
一 本件については、旧刑訴事件の上訴審における審判の特例に関する規則八条が適用されるから、控訴審判決が、証拠により罪となるべき事実を認めた理由を説明するには、証拠の標目を掲げれば足りるのである。(同規則の違法、無効でないことは、昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決、集四巻一〇号二一五一頁の趣旨に徴…
事件番号: 昭和26(れ)1742 / 裁判年月日: 昭和27年12月18日 / 結論: 棄却
いわゆる進駐軍用物資の揮発油であつても、石油製品配給規則による統制の対象となるものと解すべきである。