判旨
検察官は別個の犯罪について同時に起訴すべき義務を負わず、裁判所もまた捜査段階で同時に取り調べられた別個の犯罪を併合審理すべき義務を負わない。
問題の所在(論点)
捜査機関が同時に取り調べを行った別個の犯罪事実について、検察官に同時起訴の義務があるか。また、各別に起訴された場合、裁判所に併合審理の義務があるか。
規範
検察官は、別個の犯罪について同時に捜査が遂行された場合であっても、これらを同時に起訴すべき法的義務を負うものではない。また、裁判所も、警察や検察が同時に取り調べたことを理由として、各別に起訴された事件を当然に併合審理しなければならない義務はない。
重要事実
商工事務官であった被告人は、農機具係として商工省指定工場の指導監督等の任に当たっていた。被告人は、横領罪および収賄罪について、司法警察官および検察官から同時に取り調べを受けたが、検察官はこれらを同時に起訴せず、各別に起訴した。その結果、別個の審理・判決が行われることとなり、被告人はこの運用が不利益であり違法であると主張して上告した。
あてはめ
検察官は公訴の提起について広範な裁量を有しており(起訴便宜主義)、複数の余罪が存在する場合にどの範囲で起訴するか、あるいは分離して起訴するかは検察官の合理的な判断に委ねられている。本件において、たとえ横領罪と収賄罪が同時に捜査対象となっていたとしても、検察官がこれらを別個に起訴したことは裁量の範囲内である。また、併合審理は裁判所の訴訟指揮権に属する事項であり、捜査段階の事情のみをもって併合が強制されるものではない。したがって、分離して審理・判決されたことにより、結果として被告人に累犯加重や刑期上の不利益が生じうるとしても、その手続を違法と断ずることはできない。
結論
検察官に同時起訴の義務はなく、裁判所に併合審理の義務もないため、各別に審理・判決が行われたことは適法である。
実務上の射程
併合罪(刑法45条前段)の関係にある数罪について、検察官が一部のみを先行して起訴し、後に残りを起訴する「追起訴」や「別口起訴」の適法性を肯定する際の根拠となる。被告人側に審理の重複や刑期上の不利益(刑法48条等の適用機会の喪失)が生じる場合でも、直ちに公訴権の濫用や手続違法とはならないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和26(れ)959 / 裁判年月日: 昭和26年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が刑訴法405条の各号に該当せず、かつ同法411条を適用して判決を破棄すべき事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人両名が上告を申し立てた事案であるが、弁護人が主張した上告趣意の内容、および具体的な公訴事実の詳細は本判決文からは不明である。 第2 問題…