一 背任および臨時物資需給調整法違反が被疑事実によつて勾留された間に被疑者が収賄事実について検察官に対して供述した場合、その一事をもつて直ちに右供述を無効と解すべきではない。 二 刑法第一九七条にいう「職務」には、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務を指称するものである。 三 富山県庁達第五二号「土木工事直営施行規程」もまた法令の一種であつて、これを証拠説明の中に雑えて挙示する場合においても別に証拠調手続をすることを要しない。 四 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述であるからといつて、証拠能力を欠くものとはいえない。
一 勾留中の被疑者が勾留状に記載されていない犯罪事実について供述した場合の供述の効力 二 刑法第一九七条にいう「職務」の意義 三 法令と証拠調手続 四 共犯者たる共同被告人の公判廷における供述の証拠能力
刑法197条,刑訴法62条,刑訴法64条,刑訴法318条,刑訴法305条,刑訴法317条,刑訴法311条3項
判旨
賄賂罪における「職務」とは、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務を指し、上司の指揮命令に基づき補助的に行われる事務もこれに含まれる。また、別件の容疑による勾留中にされた余罪の供述調書についても、直ちにその証拠能力が否定されるものではない。
問題の所在(論点)
1. 賄賂罪における「職務」の範囲に、上司の命を受けて補助的に取り扱う事務が含まれるか。 2. 別件(背任等)による勾留中に、本件(収賄)に関する供述を得て作成された調書の証拠能力が認められるか。
規範
1. 刑法197条にいう「職務」とは、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務を指称する。したがって、公務員が独立した権限を有さず、上司の指揮命令を受けて事務を取り扱う場合であっても、その事務は「職務」に該当する。 2. 違法な逮捕・勾留があったとしても、その一事をもって直ちに爾後の一切の手続が違法となり、あるいはその期間中に作成された供述調書が無効となるわけではない。
重要事実
被告人Aは富山県道路課長として、大日橋改良事務所の業務全般および特定企業の作業につき指導監督を行っていた。Aは、背任罪および臨時物資需給調整法違反の容疑で逮捕・勾留されていたが、釈放の前日に収賄事件についての供述を行い、その翌日に収賄罪で起訴・勾留された。弁護人は、Aが知事や土木部長の指揮下で事務を補助する立場にすぎず独立の権限がないため、当該事務は「職務」に当たらないこと、および別件勾留中の余罪取調べによる供述調書は無効であることを主張して上告した。
あてはめ
1. 職務の範囲について、被告人は道路課長として業務の指導監督を行っており、これが上司である知事や土木部長の指揮命令に基づく事務であったとしても、公務員の地位に伴う公務である以上、刑法上の「職務」に該当すると判断される。 2. 供述調書の有効性について、被告人が背任等の嫌疑で勾留されている間に収賄について述べた調書であっても、取調べの経緯や釈放との関係に照らし、直ちに無効とすべき特段の事情は認められない。また、共同被告人の供述についても、公判廷で任意の供述を求める機会(刑訴法311条3項)がある以上、当然に証拠能力が否定されるものではない。
結論
被告人の行為は収賄罪の「職務」に関連するものと認められ、また別件勾留中の供述調書等の証拠能力を認めた原判決に違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
賄賂罪における「職務」を広く解釈し、補助的・定型的事務であっても職務関連性を認める実務の根拠となる。また、別件逮捕・勾留中の余罪取調べについて、直ちに違法とはしない実務運用を支える判例の一つであるが、現代の任意捜査の限界や別件逮捕・勾留の禁止原則との関係では、供述の任意性や正当な手続の保障の観点から慎重な検討を要する。
事件番号: 昭和25(れ)1699 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
元来昭和一二年法律第九二号輸出入品等ニ関スル件が昭和二〇年法律第四九号により昭和二一年一月一六日から廃止され同臨時措置ニ関スル件に基く命令又は処分が同年七月一六日からその効力を失うことになつたので、同年七月一五日商工省令第三四号(昭和一二年法律第九二号に基く省令の措置に関する件)によつて、カーバイト配給統制規則(昭和一…