刑法第五四条後段の牽連犯が成立するためにはある犯罪と他の犯罪との間に通常手段又は結果の関係があることが必要であつて、被告人が主観的にある犯罪の手段として行つたということだけでは足りないのである。そして窃盗教唆と賍物故買との間には通常手段又は結果の関係はないのであるから、被告人が賍物故買の手段として窃盗教唆を行つたものであつても牽連犯にあたるものでなく両者は併合罪の関係に立つものというべきであるから原判決の擬律は正当であつて論旨は理由がない。
賍物故買の手段として窃盗教唆を行つた場合に牽連犯の成否と擬律
刑法54条1項後段,刑法61条,刑法235条,刑法256条2項
判旨
窃盗教唆罪と贓物故買罪は、主観的に手段・結果の関係があったとしても通常は牽連犯にならず、併合罪の関係に立つ。刑法54条1項後段の牽連犯の成否は、犯人の主観だけでなく、客観的な通常の関係性に基づいて判断されるべきである。
問題の所在(論点)
窃盗を教唆し、その後に当該窃盗の盗品を買い受けた場合(窃盗教唆罪と贓物故買罪)、被告人の主観において前者が後者の手段であったとしても、刑法54条1項後段の「その罪の手段となり、又は結果であるとき」に該当するか。
規範
刑法54条1項後段の牽連犯が成立するためには、ある犯罪と他の犯罪との間に、単に被告人が主観的に一方を他方の手段として行ったというだけでなく、客観的に見て「通常」手段又は結果の関係があることが必要である。
重要事実
被告人は、犯意のないAに対し、窃盗を実行するよう働きかけて決意を生じさせ、Aに窃盗を行わせた(窃盗教唆)。被告人は、その窃盗によって得られた盗品を買い受ける目的(贓物故買の主観的意図)で教唆行為に及んでいたが、原審は両罪を併合罪として処断したため、被告人側が牽連犯であると主張して上告した。
事件番号: 昭和25(あ)912 / 裁判年月日: 昭和26年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法54条1項後段の牽連犯が成立するためには、犯人の主観のみならず、数罪間に罪質上通例として手段・結果の関係が存在することを要する。窃盗罪と詐欺罪の間には、客観的にそのような手段・結果の関係が存在するとは認められないため、併合罪となる。 第1 事案の概要:被告人は第一の所為として窃盗罪を犯し、第二…
あてはめ
被告人は贓物故買の手段として窃盗教唆を行ったと主張するが、窃盗教唆と贓物故買との間には、客観的に見て「通常」手段または結果の関係があるとは認められない。牽連犯の成否は被告人の主観のみによって決まるものではないため、本件の両罪は手段・結果の関係にはなく、別個独立の罪として併合罪の関係に立つというべきである。
結論
窃盗教唆罪と贓物故買罪は併合罪の関係に立ち、牽連犯とはならない。したがって、原判決の擬律は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
罪数論において牽連犯の範囲を客観的に限定する基準として重要である。実務上、特定の犯人が特定の目的のために犯罪を重ねた場合でも、その組み合わせが社会通念上「通常」の手段・結果関係にない限り、併合罪として処断する際の根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)2837 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
粳籾を贓物である情を知りながら買い受けた贓物故買の罪とこれを運搬移動した食糧管理法違反の罪とは、牽連犯ではなく、併合罪である。