判旨
刑法54条1項後段の牽連犯が成立するためには、犯人の主観のみならず、数罪間に罪質上通例として手段・結果の関係が存在することを要する。窃盗罪と詐欺罪の間には、客観的にそのような手段・結果の関係が存在するとは認められないため、併合罪となる。
問題の所在(論点)
数罪が「犯罪の手段又は結果である行為」として牽連犯(刑法54条1項後段)を構成するための要件、および窃盗罪と詐欺罪との間に牽連犯の関係が認められるか。
規範
刑法54条1項後段の牽連犯となるためには、犯人が主観的にその一方を他方の手段または結果の関係において実行したというだけでは足りず、その数罪間にその罪質上、通例として手段・結果の関係が存在すべきものたることを必要とする。
重要事実
被告人は第一の所為として窃盗罪を犯し、第二の所為として詐欺罪を犯した。弁護人は、これら数罪が手段・結果の関係にあるとして牽連犯の成立を主張し、上告した。
あてはめ
本件における窃盗罪と詐欺罪について検討するに、牽連犯の成立には客観的・典型的な手段・結果の関係が必要であるところ、窃盗罪と詐欺罪との間には、その罪質上、通例として一方が他方の手段または結果となる関係が存在するとは認められない。したがって、被告人が主観的に一方を他方の手段として実行したとしても、客観的な罪質上の関係を欠く以上、牽連犯を構成しない。
結論
窃盗罪と詐欺罪は牽連犯の関係に立つものではなく、併合罪(刑法45条前段)となる。原審が牽連犯の成立を否定した判断は正当である。
実務上の射程
牽連犯の判断基準として「主観的要件(犯人の意図)」に加えて「客観的要件(罪質上の通例的関係)」を要求した重要判例である。答案上は、住居侵入罪と窃盗罪のような典型例(牽連犯肯定)と比較し、窃盗と詐欺のように手段としての必然性や類型性が低い場合には併合罪として処理する際の論拠として用いる。
事件番号: 昭和26(あ)1086 / 裁判年月日: 昭和27年11月11日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】複数の偽造公文書を一個の行為で一括して行使した場合、一個の行為で数個の罪名に触れる観念的競合(刑法54条1項前段)が成立する。また、公文書偽造、同行使、及びこれに伴う詐欺行為の間には、手段と結果の関係が認められるため、牽連犯(同条1項後段)として処断される。 第1 事案の概要:被告人は、偽造された…
事件番号: 昭和26(れ)2098 / 裁判年月日: 昭和27年2月7日 / 結論: 棄却
収賄と公印不正使用とは牽連犯にならない。
事件番号: 昭和41(あ)2440 / 裁判年月日: 昭和42年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私文書偽造罪、同行使罪および詐欺罪が順次に手段・結果の関係にある場合、これらは刑法54条1項後段により、一罪(牽連犯)として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、私文書を偽造し(私文書偽造罪)、これを行使して(同行使罪)、人を欺いて財物を交付させた(詐欺罪)。第一審判決は、私文書偽造罪と…
事件番号: 昭和42(あ)2823 / 裁判年月日: 昭和43年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧大審院判例を変更した昭和25年2月24日最高裁決定を踏襲し、いわゆる「一事不再理の原則」や「罪数論」における既判力の範囲について、先行する確定判決の効力が及ぶ範囲を限定的に解する立場を維持したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、判決文本文には具体的な公訴事実や被…