判旨
私文書偽造罪、同行使罪および詐欺罪が順次に手段・結果の関係にある場合、これらは刑法54条1項後段により、一罪(牽連犯)として処断すべきである。
問題の所在(論点)
私文書偽造罪、同行使罪、およびその行使を手段とする詐欺罪が成立する場合、これら三罪の関係は併合罪となるか、あるいは牽連犯(一罪)として処断すべきか。
規範
複数の罪が順次に手段・結果の関係にある場合には、刑法54条1項後段の「犯罪の手段又は結果である行為が他の罪名に触れるとき」に該当し、牽連犯として一罪で処断すべきである。
重要事実
被告人は、私文書を偽造し(私文書偽造罪)、これを行使して(同行使罪)、人を欺いて財物を交付させた(詐欺罪)。第一審判決は、私文書偽造罪と同行使罪を牽連犯としたが、これらと詐欺罪とは併合罪(刑法45条前段)に当たるとして刑を加重して処断し、原審もこれを是認した。
あてはめ
本件における私文書偽造、同行使、および詐欺の各罪は、偽造した文書を行使し、その行使によって詐欺を完遂するという一連の過程にあり、順次に手段・結果の関係にあるといえる。したがって、これら全体を一つの牽連関係にあるものとして、刑法54条1項後段により一罪として処断するのが相当である。第一審が詐欺罪を併合罪とした点は法令の適用を誤るものである。
結論
私文書偽造罪、同行使罪、詐欺罪が順次に手段・結果の関係にあるときは、全体が牽連犯となり、一罪として処断される。
実務上の射程
答案上、偽造罪から詐欺罪までが連続している事案では、いわゆる「かすがい現象」的な構成をとらずとも、判例に基づき三罪を包括的に牽連犯(処断上の一罪)として処理できる。ただし、本判決は結論として原判決を破棄しなかったが、実務上は法令適用誤りを避けるため一罪として構成すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)190 / 裁判年月日: 昭和23年5月29日 / 結論: 棄却
一 昭和二二年法律第一二四號(刑法の一部を改正する法律)は刑法第五五條を削除したが同法律附則第四項により同法施行前の行爲については刑法第五五條の改正規定にかかわらずなお從前の例によることを定めておるのである。ところで被告人の本件犯罪行爲は右改正施行の日たる昭和二二年一一月一五日前に行われたものであつて公文書僞造の各所爲…
事件番号: 昭和41(あ)2732 / 裁判年月日: 昭和42年8月28日 / 結論: 棄却
甲から金員を騙取するため、乙名義の偽造の委任状等を登録官吏に提出し、乙の不動産の登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使するとともに、甲にその登録済権利証を示して、抵当権設定登録を経由した旨誤信させ、同人から借用金名下に金員を騙取したときは、公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との牽連犯…
事件番号: 昭和26(れ)1557 / 裁判年月日: 昭和27年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の虚偽の転出証明書を用いた詐欺等の犯行について、実質的に単一の犯意に基づく一連の行為と認められる場合には、これらを包括して一罪と解することができる。また、共犯者間で宣告刑に差異が生じても、犯情の個別性に基づくものである限り、憲法14条の法の下の平等に反しない。 第1 事案の概要:被告人らは、共…
事件番号: 昭和24(れ)1921 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】数個の公文書が同時に偽造された場合や、偽造と行使が牽連関係にある包括一罪等の関係にある場合、その一罪の一部について起訴があれば、起訴状に直接記載のない残余の部分についても当然に審判の範囲に属する。 第1 事案の概要:被告人らは、公文書を偽造し、これを行使して貨物係員を欺き、タイヤ等を騙取したとして…
事件番号: 昭和27(れ)201 / 裁判年月日: 昭和28年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の証明書を偽造した行為について、単一の犯意に基づく一連の動作とは認められない場合、各証明書の作成ごとに独立した偽造罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、人絹糸需要者割当証明書を複数枚にわたり偽造した。弁護人は、これらが単一の犯意の発現たる一連の動作によるものであり、一罪(または包括一罪)…