粳籾を贓物である情を知りながら買い受けた贓物故買の罪とこれを運搬移動した食糧管理法違反の罪とは、牽連犯ではなく、併合罪である。
贓物たる粳籾を故買した罪とこれを運搬移動した食糧管理法違反の罪とは牽連犯か併合罪か
刑法45条,刑法54条,刑法256条,食糧管理法31条,食糧管理法9条1項,食糧管理法施行規則29条(昭和25年2月当時のもの)
判旨
盗品等関与罪(賍物故買罪)と、その客体を運搬・移動したことによる特別法違反の罪は、保護法益を異にし、通常は手段・結果の関係にないため、刑法54条1項後段の牽連犯ではなく併合罪となる。
問題の所在(論点)
盗品であることを知って買い受ける罪(賍物故買罪)と、その目的物を運搬・移動したことによる行政取締法規(食糧管理法)違反の罪が、刑法54条1項後段の牽連犯にあたるか、それとも併合罪(同法45条前段)となるか。
規範
刑法54条1項後段の牽連犯(手段・結果の関係)とは、ある罪の性質上、その手段または結果として他の罪を犯すことが一般的・客観的に通常とされる関係にあることを要する。犯罪の取締目的や保護法益を異にする場合には、特段の事情がない限り、通常は手段・結果の関係にあるとは認められない。
重要事実
被告人は、粳籾(うるちもみ)が盗品等(賍物)である情を知りながらこれを買い受けた(旧刑法下の賍物故買罪)。その後、被告人は当該粳籾を運搬・移動させたが、これが当時の食糧管理法に違反する行為であった。弁護人は、両罪は手段・結果の関係にある牽連犯であると主張して上告した。
事件番号: 昭和26(れ)1431 / 裁判年月日: 昭和26年9月25日 / 結論: 棄却
一 しかし本件記録中には、聴取書として原本たる多くの聴取書の外に、所論指摘の聴取書謄本同抄本が編綴されており、謄本又は抄本の原本たる聴取書は編綴されていない。そして、原審第二回公判調書には、ただ単に「各聴取書」とのみ記載され、「各聴取書原本」と記載されていないのであるから、右「各聴取書」の中には前示各聴取書の謄本及び抄…
あてはめ
賍物故買罪は盗品等に関する追求権の侵害を処罰するものであるのに対し、食糧管理法違反の罪は食糧の配給・流通の適正を確保するという行政上の目的を有するものであり、両者は犯罪取締の目的および保護法益を全く異にする。したがって、一方の罪が他方の罪を犯すための通常かつ客観的な手段または結果の関係にあるとは認められない。
結論
賍物故買罪と食糧管理法違反の罪は、牽連犯ではなく、併合罪(刑法45条前段)として処断すべきである。
実務上の射程
数罪の罪数関係を判断する際、保護法益や取締目的の異同を重視する判断枠組みを示している。特に財産犯と特別法犯が競合する場合、それが単一の犯行計画に基づくものであっても、客観的に手段・結果の関係が認められなければ併合罪となることを示す基準として機能する。
事件番号: 昭和25(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と食糧管理法違反の罪が併存する場合、後者が前者に包含されない独立した事実として認定されるのであれば、併合罪として処断されるべきである。判決文の全文から、窃盗罪に包含されない別個の事実が認められる場合には、判例違反の主張は認められない。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪および食糧管理法違反の罪…
事件番号: 昭和23(れ)799 / 裁判年月日: 昭和23年11月16日 / 結論: 棄却
一 裁判所が豫斷によつて事實を認定してならないことは、まことに所論の通りである。しかし原判決は、その舉示の證據にょつて、被告人が實際に收受した數は計約三石七斗であつたにもかかわらず、これを二石八斗として買受け賣主に異議なく同量の代金を受取らせたという事實を認定し、更らにこの事實に基く推認と他の證據とを綜合して被告人が右…
事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳…