一 しかし本件記録中には、聴取書として原本たる多くの聴取書の外に、所論指摘の聴取書謄本同抄本が編綴されており、謄本又は抄本の原本たる聴取書は編綴されていない。そして、原審第二回公判調書には、ただ単に「各聴取書」とのみ記載され、「各聴取書原本」と記載されていないのであるから、右「各聴取書」の中には前示各聴取書の謄本及び抄本も含まれていると解するのを相当とする。 二 甘藷澱粉の恐喝はその性質上通常必ずしも甘藷澱粉を食糧管理法の条項に違反して運搬する手段としてなされるものということはできない上、甘藷澱粉の恐喝とそれを食糧管理法に違反して不法に運搬する罪とは、犯罪構成要件も異り、被害法益も異つているから、原判決が本件恐喝罪と食糧管理法違反の罪とを併合罪として処断したことは正当である。
一 公判調書における証拠調をした書類の表示方と「各聴取書」との表示の意義 二 甘藷澱粉の恐喝罪と之を運搬した食糧管理法違反罪との関係
旧刑訴法343条1項3号,旧刑訴法60条,刑法45条,刑法249条,食糧管理法9条
判旨
刑法54条1項後段の「犯罪の手段」とは、犯罪の性質上通常その手段として用いられるかを基準に判断すべきであり、恐喝罪と食糧管理法違反の罪は性質上、手段・結果の関係になく併合罪となる。
問題の所在(論点)
恐喝罪と、その客体を不法に運搬する食糧管理法違反の罪との間に、刑法54条1項後段の「犯罪の手段……たる行為」が認められ、牽連犯となるか。
規範
刑法54条1項後段にいう「犯罪の手段たる行為」に当たるか否かは、ある犯罪がその性質上、通常他の種の犯罪の手段として用いられるものであるか否かを標準として決定すべきである。また、各罪の犯罪構成要件や保護法益が異なる場合には、原則として別個の罪として成立し、併合罪(刑法45条)として処断される。
重要事実
事件番号: 昭和27(あ)4520 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧緊急措置令違反の罪と外国人登録令違反の罪との間には、通常、手段・結果の関係があるとは認められないため、刑法54条1項後段の牽連犯は成立しない。 第1 事案の概要:被告人が、食糧緊急措置令違反の罪および外国人登録令違反の罪を犯したとして起訴された事案である。被告人は、これらの罪が牽連犯の関係にあ…
被告人らは、共謀の上、被害者Hを脅迫して甘藷澱粉等の集荷・交付を強要し、これらを喝取した(恐喝罪)。その後、被告人らは、喝取した甘藷澱粉を食糧管理法の規定に違反して不法に運搬した(食糧管理法違反)。弁護人は、これら二罪が手段と結果の関係にあるとして牽連犯を主張したが、原審は両罪を併合罪として処断したため、上告に至った。
あてはめ
まず、甘藷澱粉の恐喝という犯罪は、その性質上、通常必ずしもこれを不法に運搬する手段として行われるものとはいえない。また、恐喝罪は個人の財産権を保護法益とするのに対し、食糧管理法違反は食糧配給の適正化という公的法益を保護するものであり、両罪は構成要件および被害法益を異にしている。したがって、両罪の間に性質上の手段・結果の関係を認めることはできない。
結論
本件恐喝罪と食糧管理法違反の罪は牽連犯ではなく、併合罪として処断すべきである。原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
牽連犯の判断基準として、主観的意図ではなく「客観的・性質的な通常性」を要求する判例理論を端的に示すものである。実務上、強盗と銃刀法違反など、一方の犯罪が他方の犯罪の手段となることが一般的に想定される場合に限り牽連犯が認められ、本件のように偶然性が高い組み合わせは併合罪となる。
事件番号: 昭和26(あ)2837 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
粳籾を贓物である情を知りながら買い受けた贓物故買の罪とこれを運搬移動した食糧管理法違反の罪とは、牽連犯ではなく、併合罪である。
事件番号: 昭和25(れ)1160 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
食糧管理法旧第三一条違反と酒税法旧第六〇条第一項違反とは牽連犯の関係に立たない。
事件番号: 昭和27(あ)1108 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反(ヤミ物資の譲渡)と物価統制令違反(超過価格での売買)が、同一の譲渡行為により発生した場合には、刑法54条1項前段の観念的競合として処理される。複数の取引がなされた場合は、これらを併合罪として処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、(1)粳…
事件番号: 昭和25(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と食糧管理法違反の罪が併存する場合、後者が前者に包含されない独立した事実として認定されるのであれば、併合罪として処断されるべきである。判決文の全文から、窃盗罪に包含されない別個の事実が認められる場合には、判例違反の主張は認められない。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪および食糧管理法違反の罪…