判旨
窃盗罪と食糧管理法違反の罪が併存する場合、後者が前者に包含されない独立した事実として認定されるのであれば、併合罪として処断されるべきである。判決文の全文から、窃盗罪に包含されない別個の事実が認められる場合には、判例違反の主張は認められない。
問題の所在(論点)
窃盗罪と食糧管理法違反が同時に成立する場面において、食糧管理法違反の事実が窃盗罪に包含されるべきか、あるいは独立した犯罪として認定し併合罪等として処断することが可能か。判決文の解釈による犯罪事実の独立性が問題となった。
規範
二つの犯罪(本件では窃盗罪と食糧管理法違反)が成立する場合、一方が他方の犯罪態様に当然に包含される(吸収される)関係にない限り、それぞれが独立した犯罪として構成される。裁判所が判決文の全体を通じて、一方の罪に包含されない別個の犯罪事実を認定していると判断できる場合には、その認定に基づき各罪を成立させることが認められる。
重要事実
被告人が窃盗罪および食糧管理法違反の罪に問われた事案において、原判決は判示第一で窃盗罪を、判示第二で食糧管理法違反をそれぞれ認定した。弁護人は、これら二つの罪が別個に成立するとした原判決に対し、判例違反等を理由に上告を申し立てた。具体的には、食糧管理法違反の事実が窃盗罪の事実に包含されるべきであるとの趣旨を含んでいたと考えられるが、原判決はこれらを別個の事実として認定していた。
あてはめ
最高裁は、原判決の全文を通読すれば、判示第二の事実は判示第一の窃盗罪に包含されない食糧管理法違反の事実を認定した趣旨であることが「たやすく了知せられる」と判断した。すなわち、形式的な構成にとらわれず判決全体の文脈から判断すれば、原審は窃盗の手段や過程に過ぎないものとしてではなく、独立した禁止規定違反として食糧管理法違反を認定していることが明白であるとした。
結論
食糧管理法違反が窃盗罪に包含されない独立した事実として認定されている以上、原判決に判例違反等は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
罪数論において、一つの行為が複数の構成要件に該当する場合や、手段・結果の関係にある場合に、一罪(吸収関係)となるか別罪となるかの境界が問題となる。本判決は、判決文の合理的解釈により、事実認定が独立した犯罪としてなされているかを判断する実務的姿勢を示しており、構成要件間の包含関係を否定する際の認定の在り方を検討する際に参照される。
事件番号: 昭和27(あ)512 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法等の規制下において、米の生産者が保有米の範囲内で加工を他人に委託し、そのために輸送を行うことが適法となる場合があるとしても、法定の除外事由がない限り、当該規制に違反する行為は違法性を阻却しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、当時の食糧管理法等の規制に違反して米の加工・輸送に関わる行為…
事件番号: 昭和27(あ)6688 / 裁判年月日: 昭和28年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の証拠が存在する場合、そのうち一部の証拠に証拠能力等の欠陥があったとしても、他の証拠によって犯罪事実を十分に認定できるのであれば、判決に影響を及ぼす違法はない。 第1 事案の概要:被告人が窃盗の罪に問われた事案において、第一審判決は証人Aの証言を含む複数の証拠を挙げて有罪を認定した。弁護人は、…
事件番号: 昭和26(あ)2837 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
粳籾を贓物である情を知りながら買い受けた贓物故買の罪とこれを運搬移動した食糧管理法違反の罪とは、牽連犯ではなく、併合罪である。