判旨
複数の証拠が存在する場合、そのうち一部の証拠に証拠能力等の欠陥があったとしても、他の証拠によって犯罪事実を十分に認定できるのであれば、判決に影響を及ぼす違法はない。
問題の所在(論点)
複数の証拠に基づいて事実認定がなされた判決において、一部の証拠に証拠能力や信用性の問題がある場合に、直ちに刑訴法411条等による破棄事由となるか。
規範
第一審判決が複数の証拠を挙示して犯罪事実を認定している場合、上告審において一部の証拠の採用が不当であると主張されたとしても、当該証拠を除外した残りの証拠によって当該犯罪事実が十分に認定できるのであれば、実質的な判決の妥当性は維持される。
重要事実
被告人が窃盗の罪に問われた事案において、第一審判決は証人Aの証言を含む複数の証拠を挙げて有罪を認定した。弁護人は、Aの証言の信用性等を争い、事実誤認や訴訟法違反を理由に上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、弁護人が問題とした証人Aの証言を仮に除外したとしても、第一審判決が提示したその他の証拠を総合すれば、窃盗の犯罪行為を十分に肯定することができる。したがって、特定の証拠の適否が結論に影響を与えるほど重大な瑕疵であるとはいえず、職権をもって判決を破棄すべき顕著な正義に反する事由は認められない。
結論
本件上告を棄却する。一部の証拠に瑕疵があっても、余の証拠により犯罪事実が認定できる以上、判決は維持される。
実務上の射程
証拠排除の主張がなされた際、その証拠の重要性が低く「仮に当該証拠を排除しても結論が揺るがない」という論法(いわゆる無害な誤り)を事実認定の文脈で用いる際の根拠となる。
事件番号: 昭和27(あ)384 / 裁判年月日: 昭和28年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において以前の審級に提出した書面を単に引用する手法は、刑事訴訟法上の適法な上告趣意の提示として認められない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗および食糧管理法違反の罪で起訴され、第一審判決およびそれを是認した原判決において有罪とされた。弁護人は上告趣意書において、第一審で提出した弁論上申の要…
事件番号: 昭和27(あ)517 / 裁判年月日: 昭和28年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決が複数の犯罪事実を認定しながら証拠の標目を一括して挙示しても、判文と記録の照合により個別の証拠と事実の対応関係が明白であれば違法ではない。また、公判廷の自白以外の証拠を総合して事実認定がなされている限り、自白のみによる事実認定の禁止(憲法38条3項)には抵触しない。 第1 事案の概要:被…
事件番号: 昭和25(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪と食糧管理法違反の罪が併存する場合、後者が前者に包含されない独立した事実として認定されるのであれば、併合罪として処断されるべきである。判決文の全文から、窃盗罪に包含されない別個の事実が認められる場合には、判例違反の主張は認められない。 第1 事案の概要:被告人が窃盗罪および食糧管理法違反の罪…