一 他の証拠によつて犯罪が現実に行われた顧客的事実が裏書されて自白が架空のものでないことが確められる限り、たとえ犯罪事実の一部分の証拠が被告人の自白だけであつても差支ないこと当裁判所昭和二三年(れ)第一四二六号同二四年一月五日大法廷判決の例示するところである。それ故所論の如く「Aが本件土地を他に売買する等のことを依頼したことがない」事実の傍証がなくても憲法及び刑訴応急措置法の規定に違反するところはない。論旨は理由がない。 二 如何なる証拠を調べるかは事実審たる原審の裁量に委せられて居る処であるから原審が所論証拠の証拠調をしたとしても違法ではない。 (処論証拠は証拠能力のあるものであるから、たとえそれが所論のように本件犯罪に関係がないものであるとしても、それ故に直ちにその証拠調を違法のものとすることは出来ない)論旨は理由がない。
一 犯罪事実の一部の証拠が被告人の自白だけである場合と憲法第三八条第三項、刑訴応急措置法第一〇条第三項 二 本案の犯罪事実に関係のない証拠の証拠調の適否
憲法38条3項,刑訴応急措置法10条3項,旧刑訴法337条,旧刑訴法338条
判旨
自白の補強証拠は、他の証拠によって犯罪が現実に行われた客観的事実が裏書きされ、自白が架空のものでないことが確かめられる限り、犯罪事実の全部を網羅する必要はない。
問題の所在(論点)
自白の補強証拠は、犯罪事実の全ての要素(特に消極的事実や一部の具体的経緯)について個別に存在する必要があるか。
規範
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、他の証拠によって犯罪が現実に行われた客観的事実が裏書きされ、自白が架空のものでないことが確かめられる限り、犯罪事実の一部について存在すれば足りる。
重要事実
被告人が土地の売買依頼等を受けていないにもかかわらず、これがあるかのように装って犯行に及んだ事案において、被告人は自白していたが、弁護人は「土地の売買依頼がなかった」という事実について自白以外の補強証拠がないことを理由に、憲法及び刑事訴訟応急措置法に違反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、自白の真実性を保障するに足りる補強証拠があれば足りるとの見解に立ち、犯罪事実の各部分について個別の証拠がなくても、全体として犯罪の客観的事実が裏付けられ、自白が架空でないと確認できれば十分であるとした。本件においても、土地売買依頼の存否という細部について個別の補強がなくても、自白の真実性が認められる限り違憲ではない。
結論
自白の補強証拠は犯罪事実の一部を裏付けるもので足りるため、本件の判決に憲法違反等の過誤はない。
実務上の射程
自白の補強法則における「実質説」の立場を明確にした初期の判例である。司法試験答案においては、補強証拠の範囲を論じる際に「自白が架空のものでないことを保障するに足りる客観的証拠があれば足りる」とする規範の根拠として引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)893 / 裁判年月日: 昭和28年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白の補強証拠は、それ自体で独立に犯罪事実を認定し得るものである必要はなく、また自白と相当因果関係的関連性を有するものに限られない。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪事実について自白したが、弁護人はその自白を補強する証拠が不十分であると主張した。具体的には、補強証拠はそれのみで独立に犯罪事実を…