判旨
被告人が犯行当時において心神喪失または心神耗弱の状態になかったという原判決の事実認定に誤りがない限り、責任能力の有無に関する主張は単なる量刑不当の主張に帰し、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
被告人が犯行時に心神喪失または心神耗弱の状態にあったという主張が、旧刑事訴訟法下において適法な上告理由となり得るか、あるいは単なる量刑不当の主張に留まるかが問題となった。
規範
被告人が犯行時に心神喪失または心神耗弱の状態にあったか否かは事実認定の問題であり、特段の事情がない限り、原判決の認定を前提とする。これに反する主張は、実質的に量刑の不当を訴えるものに過ぎず、適法な上告理由を構成しない。
重要事実
被告人が犯行に及んだ際、心神喪失または心神耗弱の状態にあったと主張して上告したが、第一審および控訴審(原判決)ではそのような精神状態にあった事実は認定されていなかった。
あてはめ
原判決において被告人が心神喪失等の状態にあった事実は認定されていない。したがって、被告人が上告趣意で述べる精神状態に関する主張は、事実誤認を前提とした量刑の不当を主張するものと評価される。
結論
本件上告は、適法な上告理由を欠くため棄却される。
実務上の射程
責任能力の有無は事実認定に属する事柄であり、上告審においては原審の事実認定を争う形での責任能力の主張は原則として認められないことを示す。実務上、上告理由を構成する際には、単なる事実の再評価ではなく、憲法違反や判例違反等の適法な事由に結びつける必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)653 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯行当時に心神耗弱の状態にあったとしても、その事実のみをもって直ちに検察官面前調書作成時においても同様の状態にあったとは認められない。 第1 事案の概要:被告人が犯行当時、心神耗弱の状態にあったと主張される事案において、弁護人は、検察官による聴取書(検面調書)作成時も同様の状態であったとして、憲法…