判旨
第一審が心神耗弱を認めなかったのに対し、原審が心神耗弱を認めて第一審判決を破棄した事実がある場合、原審が心神耗弱を認めなかったと主張する上告理由は根拠を欠く。
問題の所在(論点)
上告趣意の前提となる事実認識が原判決の認定と異なる場合に、当該上告理由が有効なものとして認められるか。
規範
上告趣意において主張される前提事実が、客観的な訴訟記録や原判決の内容と明白に矛盾する場合には、当該主張は根拠を欠くものとして採用されない。
重要事実
被告人が犯行当時、心神耗弱の状態にあったか否かが問題となった。第一審裁判所は、被告人は心神耗弱の状態になかったと認めた。これに対し、原審は第一審判決を破棄した上で、被告人が犯行当時心神耗弱の状態にあったものと認めた。しかし、弁護人は上告趣意において、原審が犯行当時心神耗弱の状態になかったと認めたことを前提として立論を行った。
あてはめ
記録によれば、原審は第一審を破棄して心神耗弱を認めていることが明らかである。これに対し、弁護人の主張は「原審が心神耗弱を認めなかった」という誤った前提に立脚している。したがって、論旨は原判決の実際の内容と食い違っており、その主張は前提を欠くといえる。また、記録を精査しても刑訴法411条を適用して職権で判決を破棄すべき事由も見当たらない。
結論
弁護人の主張は根拠を欠くため採用できず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は極めて簡潔な決定であるが、上告理由の前提事実が誤っている場合に、裁判所が実質的な判断に踏み込むことなく排斥する実務上の運用を示している。答案作成上は、原判決の認定事実を正確に把握することの重要性を示すにとどまる。
事件番号: 昭和27(あ)3639 / 裁判年月日: 昭和28年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴趣意において主張されず原判決の判断を示していない事項については、刑訴法405条の上告理由とならず、また特段の事情がない限り、刑訴法411条の職権破棄事由にも当たらない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBが、第一審判決に対し控訴したが、その際の上告趣意は、後の上告審で主張された内容を控訴趣意に…