判旨
第一審判決が、原審で主張されず単なる犯意の否認に過ぎない主張について判断を示さなかったとしても、違法ではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、第一審判決が被告人側の主張(犯意の否認等)に対して明示的な判断を示さないことが、判決に影響を及ぼすべき違法(刑訴法上の不備)に該当するか。
規範
被告人側が原審において具体的に主張していなかった事実、または単に犯意(主観的要件)を否認するにとどまる主張については、裁判所が判決において個別に判断を示す必要はない。
重要事実
被告人の弁護人は、上告趣意において特定の事実を主張したが、その事実は原審(控訴審)では主張されていなかった。また、その主張の内容は、実質的には被告人の犯意を否認するものに過ぎないものであった。
あてはめ
本件で主張された事実は、原審までの審理過程で提出されておらず、裁判所が判断の基礎とすべき対象に含まれていない。また、主張自体も「犯意がない」という一般的否認の域を出るものではない。したがって、これらに対し第一審判決が個別に逐一判断を示さなかったとしても、手続上の違法があるとはいえない。
結論
本件上告は棄却される。原審で主張されず、かつ犯意を否認するに過ぎない主張に対して判断を示さないことに違法はない。
実務上の射程
裁判所の判断不備(理由不備)を争う際の限界を示す。特に、主観的要件の否認という当然の抗弁に対し、判決がどの程度詳細に理由を示すべきかという論点において、簡潔な判断で足りる根拠として機能する。
事件番号: 昭和26(あ)3011 / 裁判年月日: 昭和28年4月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張されなかった自白の任意性に関する異議は、上告審において適法な上告理由とはならず、職権調査の必要性も認められない場合は上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、有罪の証拠とされた被告人の自白が任意になされたものではない旨を主張して上告した。しかし、この自白の任意…