判旨
原審において主張されず、かつ判断もされていない事実に基づき、第一審の手続法違反を上告理由として主張することは、実質的に適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
控訴審(原審)で一度も主張されておらず、原判決の判断にも含まれていない事実に基づき、第一審の手続法違反を上告理由として援用することができるか、その適格性が問題となる。
規範
上告審は事後審としての性質を有することから、控訴審において主張されず、かつ原判決が判断の対象としなかった新たな事実に基づき、第一審の手続違反を憲法違反や判例違反の形式で主張することは、適法な上告理由として認められない。
重要事実
被告人側が上告を提起し、憲法違反および判例違反を主張した。しかし、第一点として主張された第一審の手続法違反(憲法違反の形式)については、原審(控訴審)では一切主張されておらず、原判決においてもそれに関する判断はなされていなかった。第二点の判例違反についても、原判決の判断内容と対照して何ら反する箇所が認められなかった。
あてはめ
弁護人の主張する第一点は、憲法違反という語を用いているものの、その実体は控訴審で主張されなかった事実に依拠した第一審の手続違反の指摘にすぎない。上告審の構造上、控訴審の判断の当否を審査すべきところ、控訴審が判断していない事実を持ち出すことは、上告の適法な理由とはいえない。また、第二点の判例違反についても、原判決を精査しても所論の判例に抵触するような判断は認められないため、理由がない。
結論
本件上告は、適法な上告理由を欠くか、または理由がないため、棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟における上告審の構造(事後審・法律審)を確認するものであり、原審で主張し尽くさなかった新たな事実による不服申し立てを制限する実務上の運用を示すものである。答案上は、上告理由の適格性や、控訴審での主張の有無が上告審の審判対象を画定する点について言及する際に有用である。
事件番号: 昭和28(あ)350 / 裁判年月日: 昭和28年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が憲法違反を主張する場合であっても、原審で主張せずその判断を経ていないものは刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、量刑不当の主張も同条の上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原審(控訴審)では主張していなかった憲法違反を上告趣意として申し立てるとともに、弁護人が量刑不当を理…