判旨
控訴審において主張されなかった事実を前提とする憲法違反の主張は、適法な上告理由に当たらない。また、職権調査によっても、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる事由は存在しない。
問題の所在(論点)
控訴審において主張されなかった新たな事実を前提として憲法違反を主張することが、適法な上告理由(刑訴法405条)となるか。また、職権破棄事由(刑訴法411条)の有無が問題となる。
規範
最高裁判所は、刑訴法405条所定の上告理由に当たらない主張や、控訴審で主張されず原判決が判断を示していない事実を前提とする憲法違反の主張は、適法な上告理由として認めない。ただし、刑訴法411条に基づき、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認等の事由があり、原判決を維持することが著しく正義に反すると認められる場合には、職権で原判決を破棄することができる。
重要事実
被告人および弁護人が上告を申し立てた事案である。被告人は事実誤認を主張し、弁護人は憲法31条(適正手続)および38条(黙秘権・自白)違反を主張した。しかし、弁護人が主張する憲法違反の根拠となる事実は、控訴審において控訴趣意として主張されておらず、原判決もそれについて何ら判断を示していなかった。
あてはめ
被告人の事実誤認の主張は、刑訴法405条が規定する上告理由(憲法違反、判例違反)に含まれない。また、弁護人の憲法違反の主張は、下級審で審理・判断されていない事実を前提とするものであり、上告審の事後審的性格に照らして不適法である。さらに、記録を精査しても、原判決を維持することが著しく正義に反するといえるような重大な違法(刑訴法411条各号)は認められない。
結論
本件上告には適法な上告理由がなく、職権破棄すべき事由も認められないため、棄却を免れない。
実務上の射程
上告審における事後審構造を前提とし、控訴審での主張・判断を経ていない事実に基づく憲法違反の主張を制限する運用を示す。司法試験においては、上告受理申立てや職権破棄の可否を論じる際の限界事例として参照される。
事件番号: 昭和28(あ)1485 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において主張されず、判断も受けていない事項を上告理由とすることはできず、また事実誤認や量刑不当は刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:被告人が自白を強制されたという点について、弁護人が上告趣意において主張したが、この点は原審(控訴審)において控訴趣意として主張されてお…