判旨
憲法39条は、確定判決を経た犯罪と併合罪の関係にある別個の犯罪について、再度起訴し処罰することを禁止するものではない。併合罪の関係にある複数の犯罪を各別に起訴し審判することは、公訴権行使の当不当の問題を生じ得るとしても、直ちに裁判を違法とする理由にはならない。
問題の所在(論点)
確定判決を経た犯罪事実と併合罪の関係にある別個の犯罪事実を、後の手続で重ねて起訴し処罰することが、憲法39条の二重処罰禁止に抵触するか、および併合審理を行わずに各別に審判することの適法性が問題となる。
規範
憲法39条の二重処罰禁止の原則は、同一の犯罪事実について重ねて刑事責任を問うことを禁じるものである。併合罪の関係にある別個の犯罪については、各々が独立した犯罪を構成するため、これらを別個の公判手続で審理・処罰しても同条には違反しない。また、併合審理がなされないことによる被告人の不利益は、原則として公訴権行使の裁量の範囲内(当不当の問題)にとどまる。
重要事実
被告人は、既に確定判決を経た犯罪事実(昭和22年11月15日以降の事実)とは別に、本件犯罪事実について起訴された。弁護人は、確定判決後の犯罪事実と本件事実が実質的に同一の手続で処理されるべきものであり、別々に起訴・処罰することは被告人に不利益を与え、憲法39条の二重処罰禁止に違反すると主張して上告した。なお、一方は旧刑事訴訟法、他方は現行刑事訴訟法により各別に起訴されていた。
あてはめ
本件における確定判決済みの犯罪事実と本件犯罪事実は、いずれも刑法改正(連続犯規定の削除)後の事実であり、併合罪の関係に立つ。これらは法的に別個の犯罪に属することが明らかであるため、同一の犯罪であることを前提とする憲法39条違反の主張は前提を欠く。また、旧法と現行法という異なる手続法下で各別に起訴されたことにより被告人に不利益が生じたとしても、それは公訴権行使の妥当性の問題にすぎず、裁判所が併合審理を強制する法的根拠はない。したがって、各別に審判した原判決に違法はないといえる。
結論
併合罪の関係にある別個の犯罪を分離して起訴・処罰することは憲法39条に違反せず、適法である。
実務上の射程
併合罪の追起訴や分離公判における二重処罰禁止の限界を示す。検察官による公訴提起の分割が裁量権の逸脱・濫用(公訴棄却事由)に該当するかという論点において、実質的な不利益を考慮しつつも、原則として適法であるとする結論を導く際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和28(あ)3404 / 裁判年月日: 昭和28年11月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条後段および50条に基づき、確定裁判を経た罪とその確定前に犯した罪を併合罪として後者を処断することは、二重処罰の禁止を定めた憲法39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人両名は、過去に別の罪で確定判決を受けていたが、その裁判が確定する前に犯していた別罪について、改めて起訴された。原審は…