控訴審判決に引用せられていない証拠(控訴審における弁論終結後検察官より提出せられた第三者の副検事に対する供述調書)は、控訴審が第一審判決の事実認定の当否を判断するについて資料に供したものとは認め得ない。
控訴審弁論終結後提出された供述調書と控訴審判決の資料
刑訴法400条
判旨
控訴審において、第一審判決が挙示した証拠によって事実を認定し、第一審が挙示していない証拠を引用した形跡がない場合には、当該証拠を資料としたことを前提とする憲法違反の主張は採用されない。
問題の所在(論点)
原判決が第一審の挙示していない証拠を実質的に事実認定の資料としたか否か、およびそれを前提とする憲法違反の主張の適否。
規範
事実認定の妥当性は、判決において実際に引用・使用された証拠資料に基づいて判断されるべきであり、判決が依拠していない証拠について、それを用いたことを前提として憲法違反を主張することは、前提を欠くものとして認められない。
重要事実
被告人らは、本件綿糸が指定生産資材割当規則に掲げる「漁具糸」に該当するか否かが争われた事案において、原判決(控訴審)が特定の副検事に対する供述調書(証拠)を資料としたことにより、憲法違反が生じていると主張して上告した。しかし、原判決は第一審が挙げた証拠のみに基づいて、本件綿糸が二〇番手チーズ巻単糸であり、漁具糸ではないと認定していた。
事件番号: 昭和25(あ)1290 / 裁判年月日: 昭和26年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が主張する事実関係が原審によって認められない以上、前提となる統制の撤廃といった事情も認められず、刑訴法411条5号(刑の廃止)には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が統制の撤廃された「特綿糸」の取引を主張して上告したが、第一審判決において本件綿糸が特綿糸である事実は認められていなかった。…
あてはめ
原判決の説示を確認すると、第一審判決が挙示した証拠によって本件綿糸の属性(二〇番手チーズ巻単糸)を認定しており、弁護人が主張する「副検事黒川三次郎に対するEの供述調書」を証拠として引用した形跡は認められない。したがって、原判決の認定手法に法則違反はなく、当該供述調書を資料としたことを前提とする憲法違反の論旨は、その前提自体を欠いているといえる。
結論
本件各上告を棄却する。原判決に憲法違反および法則違反は認められない。
実務上の射程
証拠裁判主義(刑訴法317条)および控訴審の事後審的性格に関連し、判決がどの証拠を事実認定の基礎としたかを正確に特定することの重要性を示す。答案上は、判決の理由中で言及されていない証拠を攻撃対象とする主張の不当性を指摘する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)245 / 裁判年月日: 昭和26年5月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再上告において、原審で主張されず判断もされていない事項を主張すること、および証拠申請の却下という原審の裁量権内の措置を非難することは、再上告の適法な理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人両名の弁護人は、第二審における証拠申請が認められなかった点、および行政官庁による衣料の配給に関する措置を…
事件番号: 昭和25(あ)1313 / 裁判年月日: 昭和27年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない量刑不当や単なる法令違反、原審で主張されていない事項の主張は、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について上告を申し立てた際、弁護人は憲法違反の語を用いつつ、実質的には刑訴法違反、量刑不当、および第一審の認定と異なる事実を前提…
事件番号: 昭和26(れ)2301 / 裁判年月日: 昭和27年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白が記載された聴取書や訊問調書について、強制、拷問または脅迫によるものであると認めるに足りる資料がない場合には、憲法38条2項に反するとの主張は理由がない。 第1 事案の概要:被告人の自白が記載された各聴取書および訊問調書について、弁護人はこれらが強制、拷問または脅迫によって得られたもの…
事件番号: 昭和25(あ)2944 / 裁判年月日: 昭和27年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が、その実質において刑訴法411条の職権破棄事由を主張するものにすぎない場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が上告を申し立て、その趣意書において憲法違反を主張したが、その具体的内容は判決文からは不明である。最高裁は、記録を精査した上で…