判旨
第一審判決の擬律に誤りがある場合であっても、それが判決の結果に影響を及ぼすものでないと認められるときは、上告審が職権により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
問題の所在(論点)
第一審判決において法令の適用(擬律)に誤りがある場合、控訴審または上告審は、刑訴法411条を適用して職権で原判決を破棄しなければならないか。特に、その誤りが判決の結果に影響しない場合の「著しく正義に反するか」の判断基準が問題となる。
規範
刑事訴訟法411条に基づく職権破棄が認められるためには、判決の誤りが「著しく正義に反するもの」と認められる必要がある。法令の適用(擬律)に誤りがあったとしても、その誤りが判決の主文(結論)に影響を及ぼさない場合には、原則として同条による破棄は要しない。
重要事実
上告人は、原判決には証拠理由の不備があり憲法31条に違反する旨、および法令の適用(擬律)に誤りがある旨を主張して上告した。原判決(控訴審)は、第一審判決における法令の適用に誤りがあることを認めつつも、それが判決の結果自体には影響を及ぼさないものと判断し、第一審判決を維持していた。
あてはめ
最高裁は、原判決が第一審の擬律の誤りを認めつつ、判決の結果に影響しないと説明した点について「是認できる」とした。また、弁護人が指摘するその他の説示についても、本件においては「仮定的な第二義的の説明」に過ぎないと評価した。これらの事情を総合すると、本件の誤りは、刑訴法411条を適用して職権で破棄しなければ「著しく正義に反する」とまではいえないと判断される。
結論
法令の適用に誤りがあっても、それが判決の結果に影響を及ぼさない限り、職権破棄事由には当たらず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)2559 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、記録を精査しても同法411条を適用して原判決を破棄すべき事由は認められない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決(詳細は判決文からは不明)に事実誤認があるとして上告を申し立てた事案。上告趣意書において事実関係の誤りを主張したが、法律…
法令適用の誤り(擬律錯誤)を理由に上告・職権破棄を狙う際、単に誤りを指摘するだけでは足りず、それが結論を左右し「著しく正義に反する」レベルであることを論証する必要があることを示唆する。実務上、付随的な判断の誤りでは破棄を勝ち取れないという「判決への影響」の重要性を示す射程を持つ。
事件番号: 昭和26(あ)982 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告について刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないと判断し、職権調査によっても同法411条の破棄事由が認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、判決文本文には具体的な公訴事実や下級審の判断内容、弁護人が主張した上告趣…
事件番号: 昭和25(あ)1417 / 裁判年月日: 昭和25年9月19日 / 結論: 棄却
上告審に如何なる事項を以つて上告申立の理由とするか、又職權調査の範圍を如何に定めるかは立法上の問題であり、憲法第八一條の外には何等これを制限した規定は存しないのであるから、刑事訴訟法がその第四〇五條各號に規定する事由だけを上告申立の理由とすることを許し、同法第四一一條に規定する各事由を上告審の職權による破棄事由としなが…
事件番号: 昭和25(あ)2567 / 裁判年月日: 昭和26年8月1日 / 結論: 破棄差戻
一 そこで、第一審の言渡した懲役六月、執行猶予三年間の刑と原審の言渡した禁錮三月の刑とはその何れが重いかの問題を生ずる。実質的には執行猶予のもつ法律的社会的価値判断は実際において高く評価されており又さるべきものである。かくて、本件において第一審の懲役六月が第二審において禁錮三月に変更されているにかかわらず、前者には執行…
事件番号: 昭和24(れ)356 / 裁判年月日: 昭和24年3月24日 / 結論: 破棄差戻
原判決摘示の被告人の供述部分は、寧ろ被告人が假指定の事實を知らなかつた有力なる反證と見るのが相當である。しかるに原判決が被告人のその前後の供述部分を無視抹殺して全然反對の立證趣旨にこれを供したのは實驗則に反して事實を認定した違法があるものといわざるを得ない。