上告審に如何なる事項を以つて上告申立の理由とするか、又職權調査の範圍を如何に定めるかは立法上の問題であり、憲法第八一條の外には何等これを制限した規定は存しないのであるから、刑事訴訟法がその第四〇五條各號に規定する事由だけを上告申立の理由とすることを許し、同法第四一一條に規定する各事由を上告審の職權による破棄事由としながら、これを當事者からの上告申立の理由とすることを許さなかつたからといつて、憲法第八一條に牴觸するものではないので、同法第四一一條が憲法第三七條若しくはその精神に違反するものということはできない。
刑訴法第四一一條の合憲性(第三七條)と同條を上告申立の理由としなかつたことは憲法第八一條に違反するか
刑訴法411條,憲法37條,憲法81條
判旨
刑事訴訟法411条が規定する職権破棄事由を当事者の上告申立理由とすることを許さない現行の審級制度は、憲法が定める終審裁判所の権限に反せず、被告人の弁護権を保障する憲法37条にも違反しない。
問題の所在(論点)
刑訴法411条が職権破棄事由を定めるに留まり、これを当事者の上告理由として認めていないことが、憲法37条(弁護権・裁判を受ける権利の保障)および憲法81条(終審裁判所の権限)に違反するか。
規範
憲法は、最高裁判所が終審裁判所であることを定める以外、審級制度の詳細は立法政策に委ねている。したがって、上告理由を特定の事由(刑訴法405条)に限定し、その他の事由を職権破棄事項(同411条)に留めることは、立法府の裁量の範囲内であり憲法に適合する。
重要事実
被告人側は、原判決の法令違反や事実誤認等を主張して上告を申し立てた。その際、刑訴法411条が定める事項(著しい正義に反する場合の破棄事由)を当事者からの適法な上告理由として認めない現在の刑事手続の解釈は、被告人の弁護権を保障する憲法37条等に違反し、無効であると主張した。
事件番号: 昭和26(あ)982 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告について刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないと判断し、職権調査によっても同法411条の破棄事由が認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案であるが、判決文本文には具体的な公訴事実や下級審の判断内容、弁護人が主張した上告趣…
あてはめ
憲法81条は最高裁を終審裁判所と規定するが、上告審を純然たる法律審とするか、事実誤認等の審理権限を与えるかは立法政策の問題である。刑訴法405条各号所定の事由のみを上告理由とし、411条各号を職権調査の範囲に限定したとしても、憲法81条に抵触せず、被告人の権利を不当に制限するものでもないため、憲法37条の精神に反するとはいえない。
結論
刑訴法411条は憲法37条および81条に違反しない。したがって、同条所定の事由を理由とする上告申立ては不適法であり、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
上告審における上告理由の限定(法律審としての性格)の合憲性を支える基礎的な判例である。答案上は、事後審制の合憲性や、上告理由に該当しない主張に対する裁判所の職権発動の裁量を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2559 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる事実誤認の主張は刑訴法405条の上告理由に当たらない。また、記録を精査しても同法411条を適用して原判決を破棄すべき事由は認められない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決(詳細は判決文からは不明)に事実誤認があるとして上告を申し立てた事案。上告趣意書において事実関係の誤りを主張したが、法律…
事件番号: 昭和25(あ)3276 / 裁判年月日: 昭和26年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審判決の擬律に誤りがある場合であっても、それが判決の結果に影響を及ぼすものでないと認められるときは、上告審が職権により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決には証拠理由の不備があり憲法31条に違反する旨、および法令の適用(擬律)に誤り…
事件番号: 昭和25(あ)2222 / 裁判年月日: 昭和27年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、原判決の違憲主張について、過去の大法廷判例を引用して理由がないと判示し、その他の主張も適法な上告理由に当たらないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に憲法違反があるとして上告を申し立てた。具体的事案の詳細は判決文からは不明であるが、弁護人は上告趣意の第一点及び第四点…