判旨
上告審の性格を純然たる法律審とするか、事実誤認等の事由を認めるかは立法政策の問題であり、憲法32条等の憲法の保障に反するものではない。また、刑訴法411条は職権破棄の事由を定めたものであり、上告申立事由を定めた同法405条とは性質を異にする。
問題の所在(論点)
刑訴法411条が職権破棄事由にとどまり、これらを直接の上告申立理由として認めていないことが、憲法32条等の憲法の保障に反するか。
規範
上告審の審理範囲を法令違反に限定するか、事実誤認や量刑不当まで拡大するかは、立法府の広範な裁量に委ねられた立法政策の問題である。したがって、上告理由を制限しつつ、一定の場合にのみ裁判所に職権による破棄を認める構造は、憲法が保障する裁判を受ける権利(憲法32条)に違反しない。
重要事実
被告人が、刑訴法411条(判決文上は411条の誤記とされる511条)に規定される事由を上告理由として主張し、上告を申し立てた事案である。被告人は、同条が上告申立事由を限定している点などが憲法の精神や憲法32条に違反すると主張した。
あてはめ
最高裁は、上告審を純然たる法律審とするか、事実審理の権限を与えるかは「一に立法政策の問題」であるとの確立した判断枠組みを提示した。本件において刑訴法411条は、405条所定の申立事由がない場合でも、著しく正義に反すると認めたときに「職権で」破棄できる事由を定めたものに過ぎない。このように、被告人に直接の申立権を与えず裁判所の職権行使に委ねる制度設計は、上告審の性格をどう定義するかという立法政策の範囲内といえる。したがって、被告人の違憲の主張は当たらない。
結論
上告を棄却する。刑訴法411条の規定及び上告審の構造は憲法32条に違反しない。
実務上の射程
上告審が事後審・法律審であることの憲法上の正当性を裏付ける判例である。答案上は、上告理由が限定されていることの合憲性や、411条が「申立理由」ではなく「職権破棄事由」であることを論証する際に引用する。特に、裁判を受ける権利の内容が立法政策によって具体化される限界を示す文脈で有用である。
事件番号: 昭和26(あ)81 / 裁判年月日: 昭和26年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意に刑訴法405条所定の上告理由がない場合、記録を精査しても同法411条を適用すべき事由が認められない限り、上告は棄却される。 第1 事案の概要:被告人および弁護人が上告を申し立てた事案において、上告趣意が提出されたが、その内容について検討が必要となった。具体的な犯罪事実に係る詳細な…