のみならず記録によると、第一審第六回公判期日において被告人及び弁護人は裁判官から証拠の証明力を争うことができる旨を告げられたのに対し別に争うことは無い旨陳述していることが認められる。されば所論証人Aの証言が伝聞証書であつたとしても刑訴三二六条により証拠能力を有するに至る。
被告人及び弁護人が伝聞証言を証拠とすることを争わない場合とその証言の証拠能力
刑訴法320条,刑訴法326条
判旨
伝聞証拠であっても、第一審で被告人及び弁護人が証拠の証明力を争わない旨を陳述した場合には、刑訴法326条により適法に証拠能力が付与される。また、事実審の裁量に属する刑の量定が不当であるというだけでは、憲法13条に違反するとはいえない。
問題の所在(論点)
1. 被告人が第一審で争わない旨を陳述した伝聞証拠について、刑訴法326条の同意があったと認められるか。2. 単なる量刑不当の主張が憲法13条違反として適法な上告理由になり得るか。
規範
刑事訴訟法326条に基づき、検察官及び被告人が証拠とすることに同意した場合には、伝聞証拠であっても証拠能力を有する。また、量刑の不当については、それが事実審の裁量権の範囲内にある限り、直ちに憲法違反の問題を生じさせるものではない。
重要事実
被告人Bの弁護人は、証人Aの証言が伝聞証言であり証拠能力を欠くと主張して上告した。しかし、第一審の公判期日において、裁判官から証拠の証明力を争うことができる旨を告知された際、被告人及び弁護人は「別に争うことは無い」旨を陳述していた。また、被告人Cの弁護人は、犯行の動機や改悛の情を理由に、原判決の量刑不当が憲法13条に違反すると主張した。
あてはめ
1. 被告人及び弁護人は、第一審第六回公判期日にて裁判官から証拠の証明力を争う機会を与えられながら、自ら「別に争うことは無い」と明示的に陳述している。この陳述は刑訴法326条にいう証拠同意に該当すると解されるため、証言が伝聞であっても証拠能力に欠けるところはない。2. 被告人Cの量刑については、事実審がその裁量権の範囲内で適法に行ったものであり、単にその量定が不当であると主張することは、実質的に単なる訴訟法違反の主張に過ぎず、憲法違反には当たらない。
結論
1. 刑訴法326条の同意がある以上、当該伝聞証拠に証拠能力は認められる。2. 量刑不当は適法な上告理由に該当せず、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
証拠同意(326条)の擬制的な判断や、上告審における量刑不当の主張が憲法違反として扱われないことを示す実務的な先例である。答案上は、明示的な「同意」がなくとも、証明力を争わない旨の陳述があれば326条の同意ありとして証拠能力を認める際の根拠となり得る。
事件番号: 昭和27(あ)3314 / 裁判年月日: 昭和28年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人および弁護人が証拠とすることに同意した検察官面前調書については、伝聞法則の例外として証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人が起訴された刑事事件において、検察官はA証人の検事に対する供述調書を証拠として請求した。これに対し、被告人およびその弁護人は、当該供述調書を証拠とすることについ…