原判決は、第一審判決の法令の適用に違法があるとしてこれを破棄した上刑訴四〇〇条但書により自ら本件被告事件につき量刑処断したものであるから、所論量刑不当の控訴趣意については判断を与える必要がないものである。
第一審判決の法令違反を理由として破棄自判する第二審判決と量刑不当の主張に対する判断
刑訴法392条,刑訴法397条,刑訴法400条但書
判旨
憲法38条3項及び刑訴法319条1項の自白の補強証拠について、犯罪構成要件の一部である「知情」(主観的要件)については、被告人の自白のみによって認定することが許される。
問題の所在(論点)
憲法38条3項(及び刑訴法319条1項)に基づき、自白のみで処罰されないために必要な「補強証拠」の範囲。特に、犯罪構成要件のうち主観的要素(知情の点)についてのみ自白で認定することが許されるか。
規範
自白の補強証拠が必要とされる趣旨は、自白の真実性を担保し、架空の犯罪による誤判を防止する点にある。したがって、客観的な罪体(結果及び行為)について補強証拠が存在すれば足り、犯罪構成要件の一部である主観的要素(故意や知情)については、被告人の自白のみによって認定しても憲法38条3項に違反しない。
重要事実
被告人は賍物故買(現在の盗品等有償譲受け罪)の事実で起訴された。第一審判決は、盗難被害届謄本や上申書等の証拠により、盗難の被害事実や物品の移動といった客観的事実を認定したが、被告人が当該物品を盗品であると知っていたという「知情」の点については、被告人の自白(公判廷及び捜査段階)を証拠として認定した。これに対し弁護人は、知情の点について自白以外の証拠がないことは憲法38条3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、賍物故買の事実のうち「知情」を除いた客観的な事実関係については、被告人の自白以外に被害届謄本や上申書といった外部的な証拠が存在している。これにより、自白の真実性が客観的に担保されているといえる。知情のような主観的な構成要件要素は、性質上、客観的な補強証拠を求めることが困難な場合が多く、客観的事態について補強証拠がある以上、当該要素を自白のみで認定しても、誤った処罰を招くおそれはないと解される。
結論
犯罪構成要件の一部である「知情」の点のみを被告人の自白で認定しても、憲法38条3項に違反しない。
実務上の射程
補強証拠の範囲に関する基本的判例。答案上では「補強証拠は、自白にかかる犯罪事実の客観的部分、すなわち罪体について存在すれば足りる」との規範を明示した上で、故意・目的・不法領得の意思などの主観的要件について補強証拠が不要であることを説明する際に引用する。
事件番号: 昭和25(あ)3394 / 裁判年月日: 昭和26年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪の主観的態様である知情等の点については、直接の補強証拠がなくても、客観的構成要件に該当する事実について補強証拠があり、自白の真実性が担保されるのであれば、自白のみで認定できる。 第1 事案の概要:被告人が、ある犯罪事実についてその主観的要素(知情の点)を自白していたが、当該主観的要素を直接裏付…