判旨
憲法22条(居住移転・職業選択の自由)や25条(生存権)は犯罪の処罰を禁止する趣旨を含まないため、国家の不作為により犯罪に至ったとしても、その処罰は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
生存権(憲法25条)や経済的自由(22条)の保障を目的とする国家の立法不十分が、犯罪の動機や原因となっている場合、当該犯罪を処罰することは憲法に違反するか。
規範
憲法22条および25条は、犯罪の処罰を直接規定するものではなく、これらの規定から犯罪の動機や縁由が国家の立法不備にあることを理由として犯罪の処罰を禁止する趣旨を導き出すことはできない。したがって、かかる事情がある場合であっても、適法な手続に基づき犯罪を処罰することは、憲法37条(刑事被告人の諸権利)に違反しない。
重要事実
被告人が特定の犯罪(判決文上では「判示の罪」とされ具体名は不明)を犯し、有罪判決を受けた。弁護人は、国家が憲法22条および25条に基づき十全な立法を行わなかったために被告人が犯罪を犯すに至ったのであるから、被告人を処罰することは憲法22条、25条および37条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
憲法22条および25条は社会保障や自由権の保障を宣言するものであり、犯罪処罰の可否を直接左右する性質のものではない。被告人が主張する「国家の立法不備」という事情は、犯罪に至る動機や縁由にすぎず、刑罰権の行使を法的に妨げるものではない。また、適正な刑事手続を経てなされた原判決の処罰は憲法37条にも抵触しない。よって、被告人の主張は実質的に原判決の量刑を非難するにとどまるものである。
結論
被告人を処罰した原判決は、憲法22条、25条、37条のいずれにも違反しない。
実務上の射程
生存権等のプログラム規定性を背景に、犯罪の誘因が社会的事情にあることを理由とした違憲主張を否定する。答案上は、生存権侵害を理由とする犯罪の違法性阻却や、刑事手続の適正性を争う場面での反論として、判例が動機レベルの主張を排斥した文脈で言及しうる。
事件番号: 昭和26(あ)476 / 裁判年月日: 昭和27年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由に当たらない主張や単なる訴訟法違反の主張は、刑訴法405条の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り棄却される。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が、原判決に判例違反および訴訟法違反があるとして上告を申し立てた。しかし、その判例違反の主張は、原判決が実際には判断を下していない事項を前提と…