判旨
共謀共同正犯の成立において、被告人自身が実行行為の一部を分担し、かつ他の共犯者との間に犯意の共通が認められる場合、自ら利得を得ていなくとも、他の共犯者が得た不法な利益について罪責を負う。
問題の所在(論点)
恐喝罪(刑法249条2項)の共同正犯において、被告人が自ら脅迫行為の一部を分担しているものの、財産上の利益を得たのが他の共犯者のみである場合、被告人に同罪の共同正犯が成立するか。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、二人以上の者が特定の犯罪を行うことについて意思の合致(共謀)があり、その共謀に基づいて犯罪が実行されることを要する。被告人自身が実行行為の一部を分担している場合には、その行為が他の共犯者による利得に向けられたものであっても、共謀の範囲内において全責任を負う。
重要事実
被告人Aは、B、C、Dと共謀し、被害者Eに対し「御馳走を出せ」「芸妓を呼べ」等と要求した。その際、Dがナイフを見せ、被告人Aもナイフを畳に突き刺す等の脅迫行為に及んだ。これにより畏怖したEは、芸妓2名を呼び、BおよびCの2名に対して遊興費2,000円相当の遊興をさせた。A自身は直接的な財産上の利益を得ていなかった。
あてはめ
被告人Aは、Bらと「犯意を共通」にしており、被害者Eに対しナイフを畳に突き刺すという、恐喝罪の実行行為たる「脅迫」を自ら分担している。この脅迫はEを畏怖させ、芸妓を呼ばせるという財産上の利益供与に向けられた一連の行為の一部である。A自身が利得を得ていなくとも、共謀に基づき他の共犯者が不法に利得した結果が生じた以上、Aの行為と利得結果との間には因果関係が認められる。したがって、Aは他の共犯者が得た利益についても共同正犯としての責任を免れない。
結論
被告人Aに恐喝罪(2項恐喝)の共同正犯が成立する。
実務上の射程
共同正犯における一部実行全部責任の原則を確認する事例である。特に2項恐喝において「誰が利得したか」は構成要件的結果の発生を判断する要素ではあるが、共犯者の一人が利得すれば足り、被告人自身の利得は要件ではないことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和27(あ)5346 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
−被告人間の利害が相反しない事例− 記録によれば、第一審において被告人Aの私選弁護人大曲実形は、同時に共同被告人Bの国選弁護人に選任されたけれども、Bに対する公訴事実は密出国の事実であり被告人Aに対する公訴事実は密出国にあたり登録証明書を返還しなかつた事実及び密輸出を幇助した事実であつて両名間に共犯関係のないことはもち…
事件番号: 昭和27(あ)4520 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧緊急措置令違反の罪と外国人登録令違反の罪との間には、通常、手段・結果の関係があるとは認められないため、刑法54条1項後段の牽連犯は成立しない。 第1 事案の概要:被告人が、食糧緊急措置令違反の罪および外国人登録令違反の罪を犯したとして起訴された事案である。被告人は、これらの罪が牽連犯の関係にあ…