判旨
正当な債権を有する者がその権利実行のために恐喝手段を用いても、直ちに恐喝罪を構成するものではないが、その手段が他罪(脅迫罪等)に触れる場合には当該罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
正当な権利を有する者が、権利実行の手段として脅迫行為を用いた場合、刑法222条の脅迫罪が成立するか。
規範
法律上、他人から財物又は財産上の利益を受領する正当な権利を有する者が、その権利を実行する手段として脅迫等の行為に及んだ場合、その手段が社会通念上許容される範囲を超えるときは、恐喝罪の成否にかかわらず、当該手段自体が独立して脅迫罪等の他罪を構成する。
重要事実
被告人Bは、債権取立の目的で、債務者に対して脅迫的な内容を記載したはがきを郵送した。弁護人は、正当な権利行使の範囲内であるとして無罪を主張したが、一審判決は脅迫罪の成立を認め、原審もこれを支持したため、被告人が上告した。
あてはめ
債権取立という正当な目的があったとしても、その手段として用いられた行為が別途罪名に触れる場合には不問に付すべきではない。本件において、債務者に対し一審判決が摘示するような(害悪の告知を含む)事項を記載したはがきを郵送する行為は、権利行使の態様として不相当であり、脅迫罪の構成要件を充足するといえる。
結論
債権取立のためであっても、脅迫的な内容のはがきを郵送する行為は脅迫罪を構成する。したがって、被告人らを処断した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自切行為(権利行使)における違法性の限界を示す重要判例。恐喝罪における「不法領得の意思」の欠如により恐喝罪が否定される場面でも、手段の違法性が高い場合には脅迫罪や暴行罪が成立することを明示しており、答案上は手段の相当性を検討する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和41(あ)2301 / 裁判年月日: 昭和42年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】正当な権利行使の手段として行われた恐喝行為であっても、その手段方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱する場合には、恐喝罪が成立する。 第1 事案の概要:上告人は正当な権利(債権等)を有していたが、その行使に際して恐喝罪の構成要件に該当する行為を行った。弁護人は権利行使である以上…