判旨
食糧管理法違反の事案において、米穀等の買受代金を別途売却した物品の代金と相殺する形で決済した場合であっても、実質的に代金の支払に代えて同価格の物を提供したものとして、同法の規制対象となる取引に該当する。
問題の所在(論点)
米穀の買受代金の支払に代えて、同価格の別物品(モーター)の代金債権を充当する決済方法をとった場合、食糧管理法上の取引として規制対象となるか。
規範
特定の物品の代金支払について、あらかじめ定めた価格に基づき、これと同価格の別物品をもって支払に充てた場合(代物弁済的決済)であっても、取引の実態が価格を伴う授受である以上、統制法令上の「買受け」等の概念に含まれる。
重要事実
被告人は、Aから玄米9斗(および梗玄米2斗5升)を買い受けた。その際、被告人は現金で直接支払う代わりに、以前にAに対して売却していたモーターの代金債権(8500円相当)をもって、本件玄米の代金支払に充てた。第一審および原審はこの事実を認定し、食糧管理法違反と判断したため、被告人が判例違反等を理由に上告した。
あてはめ
被告人がAから提供を受けた玄米9斗の代金は8500円と定められていた。これに対し、被告人が先にAに売却していたモーターの価格を充てて支払った事実は、代金を定めた上で他の同価格の物をもって支払に代えたものといえる。このような相殺・代物弁済的決済であっても、実質的には米穀の対価を支払って取得する行為に他ならない。したがって、第一審が認定した事実関係に齟齬はなく、法適用を誤った瑕疵も認められない。
結論
本件のような代金相殺による米穀の取得も食糧管理法上の規制対象に含まれる。したがって、原判決の判断に判例違反や理由齟齬の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
統制経済下における「買受け」等の概念について、金銭の直接的な受け渡しのみならず、債権相殺や物品による代用といった経済的実質を重視して判断する姿勢を示す。司法試験においては、行政刑法や経済法規の解釈において、形式的な決済手段のいかんを問わず規制目的から行為の性質を把握する際の参考となる。
事件番号: 昭和26(あ)4896 / 裁判年月日: 昭和27年12月19日 / 結論: 棄却
食糧管理法第九条にいう譲渡その他の処分の中には、売買をも含むものと解するのが相当である。従つて、同法第九条は、政府が本件の如き主要食糧の買受行為を禁圧するため必要な命令をなすことを得る趣旨をも包含するものと解すべきは勿論である。