一 有罪判決において、数個の独立した犯罪事実を認定するにあたり、証拠の標目を一括して挙示したからといつて、ただそれだけでは、その判決は、かかる場合の証拠説明の仕方に関し、何ら法律上の判断見解を示したものとはいえない。 二 押収した犯罪行為組成物件の刑訴第一二二条(第二二二条)による換価代金は、刑法第一九条の適用上、被換価物件と同一視すべきものであつて、同条にいわゆる「対価」ではない。
一 有罪判決において証拠の標目を挙示したことと証拠説明に関する法律上の判断 二 刑訴法第一二二条による換価代金と刑法第一九条
刑訴法335条1項,刑訴法405条,刑訴法122条,刑訴法222条,刑訴法19条
判旨
犯罪の組成物件そのものではなく、その換価代金であっても、法律上は被換価物件と同一視すべきものであるから、没収の対象とすることができる。
問題の所在(論点)
犯罪の組成物件(粳精米および小豆)が換価されて金銭となっている場合に、当該換価代金を元の物件と同一視して没収することができるか。換価代金の法的性質が問題となる。
規範
没収の対象となる「犯罪行為を組成した物」等の目的物が、適法または適宜の理由により金銭に換価されている場合、その換価代金は法律上被換価物件(元の物件)と同一視すべき性質を有する。したがって、当該金員は対価(追徴の対象)ではなく、物件そのものに代わる没収対象として取り扱うことができる。
重要事実
被告人が、犯罪組成物件である粳精米(うるちまい)および小豆を所持等していた事案において、第一審判決を事実誤認として破棄した控訴審(原審)が、これらの物件の換価代金である金員について没収を言い渡した。これに対し、被告人側が、当該金員は物件そのものではなく没収の対象にならない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において没収の対象とされた金員は、犯罪組成物件である粳精米(証1号)および小豆(証2号)が換価されたものである。換価代金は、元の物件が形態を変えたものにすぎず、法律上は被換価物件と同一視すべきものである。これは、物件の価値が具体化したものであり、犯罪による利得として得た「対価」とは性質が異なる。したがって、元の物件が没収可能である以上、その同一性を保持する換価代金もまた没収の対象となり得る。
結論
換価代金は被換価物件と同一視すべきものであるから、これを没収した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
物件の現物が滅失・処分される前に公訴提起前等の段階で換価されている場合に、追徴ではなく「没収」の手続きをとるための理論的基礎となる。答案上は、没収の対象物の同一性を論じる際に、換価代金が「性質上の代替物」として没収の客体に含まれることを記述する際に活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2067 / 裁判年月日: 昭和27年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧管理法違反の事案において、米穀等の買受代金を別途売却した物品の代金と相殺する形で決済した場合であっても、実質的に代金の支払に代えて同価格の物を提供したものとして、同法の規制対象となる取引に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、Aから玄米9斗(および梗玄米2斗5升)を買い受けた。その際、被告人…