判旨
簡易裁判所の唯一の裁判官が発付した令状に基づき、当該裁判官が本件の審判に関与することは、刑訴規則187条2項但書の「他に裁判官のない場合」に該当し、違法ではない。
問題の所在(論点)
簡易裁判所に裁判官が1名しか配置されていない場合において、令状を発付した裁判官が本案の審判に関与することは、刑訴法20条6号の趣旨等に鑑み許容されるか。
規範
刑事訴訟法20条6号は、裁判官が事件について予断を抱くおそれを排除し、公平な裁判を担保することを趣旨とする。もっとも、刑訴規則187条2項但書に基づき、他に代わるべき裁判官がいない特別の事情がある場合には、令状発付に関与した裁判官が本案の審理・裁判に関与することも許容される。
重要事実
掛川簡易裁判所に所属する裁判官(近藤周一氏)は、当該裁判所に配置されている唯一の裁判官であった。当該裁判官は、本件について捜査段階で令状を発付したが、その後の本案の審判にも関与した。弁護人は、令状を発付した裁判官が審判に関与したことは訴訟法違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件における掛川簡易裁判所には、裁判官が1人しか配置されていない事実は当裁判所に顕著である。このような状況は、刑訴規則187条2項但書に規定される「他に裁判官のない場合」に該当すると認められる。したがって、当該裁判官が令状を発付した後に本件の審理に関与したとしても、法規の許容する範囲内であり、裁判の公平を害する違法な関与とはいえない。
結論
令状を発付した裁判官が本件の審判に関与したことは違法ではなく、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
裁判官の除斥・回避に関する議論において、物理的に代替可能な裁判官がいない離島や単独制の小規模裁判所における例外的な許容範囲を示す判例である。答案上では、公平な裁判の要請と裁判所の人的制約という現実的要請の調和として言及する。
事件番号: 昭和26(あ)377 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判官とは裁判の職務を行う官吏の総称であり、「判事」はすべて「裁判官」に含まれる。したがって、裁判書や公判調書において「判事」と表示することは、当該裁判官が適法に関与したことを示すものとして正当である。 第1 事案の概要:被告人が提起した上告において、原審(控訴審)の第一回および第二回公判調書に「…