少年法第二〇条による検察官送致の決定をした裁判官が、後にその刑事事件の審判に関与しても、刑訴第二〇条第七号にいう前審の裁判に関与したものということはできない。
少年法第二〇条による検察官送致の決定をした裁判官はその刑事事件において職務の執行から除斥されるか
憲法37条1項,刑訴法20条7号,少年法20条
判旨
家庭裁判所において少年審判事件に関与し、検察官への送致決定を行った裁判官が、その後に提起された同一被告事件の刑事公判に関与することは、刑事訴訟法20条7号にいう「前審の裁判」に関与した場合には当たらない。
問題の所在(論点)
家庭裁判所において検察官送致決定を行った裁判官が、その後に提起された当該被告事件の刑事公判に関与することが、刑事訴訟法20条7号の除斥事由である「前審の裁判に関与したとき」に該当するか。
規範
刑事訴訟法20条7号にいう「前審の裁判」とは、下級審の裁判に対する上訴申立てによって開始された上訴審における当該下級審の裁判、あるいは差戻し前の裁判等を指す。したがって、少年法に基づく家庭裁判所の保護処分(または検察官送致決定)に至る審判手続は、その後に提起された被告事件の審判そのもの(第一審)とは手続の性質を異にするため、「前審」には含まれない。
重要事実
被告人に対する家庭裁判所の少年審判事件に関与し、同事件を検察官へ送致する決定(検察官送致決定)を行ったA裁判官が、その後、起訴された同被告事件の第一審第二回公判期日に裁判官として関与し、証人尋問を実施した。その後、別の裁判官に更迭されたが、更迭後の裁判官がA裁判官の取り調べた証人らの供述記載を判決の証拠として引用した。
事件番号: 昭和37(あ)3074 / 裁判年月日: 昭和38年4月12日 / 結論: 棄却
少年法第二〇条による検察官送致の決定をした裁判官が後にその刑事事件の審判に関与しても裁判官除斥の原因とならない(当裁判所昭和二七年(あ)第五四七四号同二九年二月二六日第二小法廷決定、刑集八巻二号一九八頁参照)。
あてはめ
本件において、A裁判官が行った検察官送致決定は、家庭裁判所における少年審判手続内での判断であり、刑事訴訟における第一審判決に先立つ「前審」としての裁判には当たらない。したがって、A裁判官が刑事公判に関与しても除斥の対象とはならず、同裁判官が関与した公判期日において作成された証人尋問調書等の証拠能力を否定すべき違法も認められない。
結論
家庭裁判所の少年審判に関与した裁判官が、その後の被告事件の審判に関与しても、刑訴法20条7号の除斥事由には該当しない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の除斥事由(20条各号)の解釈において、同条7号の「前審」を限定的に解釈する際の手がかりとなる。少年審判に限らず、起訴前の令状裁判に関与した裁判官が公判に関与することの是非など、手続の連続性と公平性の観点から「前審」の意義が問われる場面で参照すべき判例である。
事件番号: 昭和26(あ)175 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
宇治山田簡易裁判所裁判官Aが逮捕状並びに勾留状を発しながら本件第一審の審理判決をしたことは所論のとおりであるが、そのために同裁判官が職務から除斥されることがないことは勿論忌避の理由があるものとも認められない。