判旨
犯罪成立後の法令改廃により刑が廃止された場合であっても、それが単なる事実上の変更にすぎないときは刑法6条及び刑事訴訟法411条5号は適用されず、既に成立した刑罰権は消滅しない。
問題の所在(論点)
物価統制令に基づく統制額の告示が犯罪成立後に廃止された場合、刑事訴訟法411条5号の「刑の廃止」に該当するか。いわゆる限時法および法令の改廃に伴う刑罰権の存続が問題となる。
規範
犯罪成立後に統制額を定めた告示等が廃止された場合であっても、それが当該法令自体の改廃ではなく、経済情勢の変動等に基づく事実上の変更にとどまるのであれば、刑の廃止(刑訴法411条5号等)には該当せず、行為時の法令に基づき罰せられる。
重要事実
被告人が物価統制令に違反して生ゴムを統制額を超えて取引した事案において、犯罪成立後に生ゴムの統制額を定めた物価庁告示135号が廃止された。被告側は、罰則適用を維持する旨の経過規定がない以上、刑の廃止にあたるとして上告した。
あてはめ
本件に適用された物価統制令3条、4条等は依然として有効に存続している。生ゴムの統制額を定めた告示が廃止されたのは、経済情勢の変化に応じた事実上の変更であり、既に成立した刑罰を廃止する趣旨ではない。したがって、経過規定の有無にかかわらず、刑の廃止にはあたらないと評価される。
結論
本件は刑の廃止には当たらず、上告を棄却し有罪とした原判決を維持する。
実務上の射程
「限時法」や「事実上の変更」に関する論点において、判例(大法廷判決の流れを汲む小法廷決定)の立場を示す際に使用する。答案上は、法律そのものの改廃(法的評価の変更)か、単なる事実上の前提の変化(事実上の変更)かを区別する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1592 / 裁判年月日: 昭和26年1月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯行時に有効であった物価統制令が犯行後に廃止されたとしても、既に成立した物価統制令違反罪の刑罰を廃止するものではなく、犯罪の成立および刑の言渡しに影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が物価統制令に違反する行為を行った後、当該物価統制(法令)が廃止されたため、刑法6条(刑の変更)や刑事訴訟法…