被告人の自白調書が他の証拠資料と同時にその証拠調請求がなされていても、この証拠調が他の証拠資料の取調がなされた後になされている場合には、刑訴三〇一条の趣旨に反する手続とはいえない(昭和二五年(あ)第八六五号同二六年六月一日第二小法延決定判例集第五巻七号一二三二頁参照)。
刑法第三〇一条の趣旨に反しない場合
刑訴法301条
判旨
被告人の自白調書の証拠調べが他の証拠資料の取調べの後に行われたのであれば、証拠調べの請求が他の証拠と同時になされたとしても、刑訴法301条の趣旨に反しない。
問題の所在(論点)
被告人の自白調書が他の証拠資料と同時に証拠調べ請求された場合、その取調べが他の証拠の後に行われたとしても、刑事訴訟法301条に違反するか。
規範
刑事訴訟法301条は、被告人の自白を内容とする証拠書類について、他の証拠の取調べが終わった後でなければ、その取調べを請求することができないと定めている。しかし、実務上の運用として、証拠調べの請求自体が他の証拠資料と同時になされたとしても、実際の取調べ(要旨の告知等)が他の証拠資料の取調べの後に行われるのであれば、予断排除という同条の趣旨に反するものではない。
重要事実
第一審の第一回公判において、検察官は被告人の自白調書を他の証拠資料と同時に証拠調べ請求した。しかし、実際の証拠調べの手続きとしては、他の証拠資料の取調べがすべて完了した後に、被告人の自白調書の取調べが実施された。
あてはめ
本件では、自白調書の証拠調べ請求こそ他の証拠と同時に行われている。しかし、第一審の公判調書によれば、実際の取調べの順序としては、他の証拠資料の取調べが先行して実施され、自白調書の取調べはその後に実施されている。刑訴法301条が自白の取調べ時期を制限しているのは、裁判官に予断を生じさせないためであるが、実際の取調べ順序が守られている以上、同条の趣旨に反する不当な手続とはいえない。
結論
被告人の自白調書の証拠調べ請求が他の証拠と同時であっても、取調べが最後に行われたのであれば、刑事訴訟法301条に違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法301条の「請求」の文言を厳格に解釈せず、実質的な取調べ順序によって予断排除の目的が達せられているかを重視する判断である。実務上、一括して証拠請求が行われることが多いため、取調べの「実施順序」が適法性の基準となることを示した射程を持つ。答案上は、証拠調べの手続違背が問題となる場面で、条文の趣旨に遡って適法性を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)2659 / 裁判年月日: 昭和28年4月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】被告人の自白を内容とする証拠の取調請求および実施について、被害に関する書類等の取調に続いて順次これを行うことは、刑事訴訟法301条の法意に反しない。 第1 事案の概要:第一審の第一回公判期日において、検察官は被告人3名による被害事実、犯行主体、情状に関する立証のため、被害者7名の犯罪届書や被害始末…
事件番号: 昭和28(あ)3712 / 裁判年月日: 昭和30年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白調書が他の証拠と一括して取調請求された場合であっても、実際の証拠調べにおいて当該自白調書に先立ち他の証拠が取り調べられたのであれば、刑訴法301条の趣旨に違反しない。 第1 事案の概要:被告人の自白調書が、犯罪事実に関する他の証拠と一括して証拠調べの請求がなされた。しかし、第一審の公判…