判旨
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗のおそれのない組織構成をもつ裁判所を意味し、被告人が刑の量定等に不服がある場合に公平でないと主張する権利を付与したものではない。また、国選弁護人の報酬等を被告人に負担させることは同条3項に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 判決の具体的な内容(刑の量定の適否等)が憲法37条1項の「公平な裁判所」による裁判か否かの判断基準となるか。 2. 国選弁護人の報酬等の訴訟費用を被告人に負担させることが、憲法37条3項の保障する弁護人依頼権に抵触するか。
規範
1. 憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、偏頗のおそれのない組織構成をもつ裁判所という意味であり、個別の判決内容(刑の量定等)に対し、被告人の主観的な不服を憲法上の権利として認めるものではない。 2. 国選弁護人の報酬等の費用を誰に負担させるかは法律の合理的な規定に委ねられており、これを公訴に関する費用として被告人に負担させることは、憲法37条3項に違反しない。
重要事実
被告人は窃盗等の罪で起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。被告人側は、原判決が併合罪の規定(刑法47条)を適用しなかったことや、国選弁護人の報酬等の訴訟費用を被告人に負担させたことが、憲法37条1項(公平な裁判を受ける権利)および同条3項(弁護人依頼権)に違反するとして上告した。
あてはめ
1. 被告人は刑法47条の不適用を理由に裁判の不公平を主張するが、憲法37条1項は「偏頗のおそれのない組織構成」を求めているにすぎない。組織構成に問題がない以上、特定の法条適用の成否や刑の軽重という実体判断は同項の問題ではない。 2. 弁護人報酬の負担については刑事訴訟費用法(当時)等の法律が適当に規定し得る事項である。国選弁護制度は公的保障の一環であるが、その費用を敗訴した被告人に命ずることは、弁護人依頼権の本質を害するものではない。
結論
被告人に対し、刑の量定の不満を理由に憲法37条1項違反を認めることはできず、また国選弁護人の報酬を被告人に負担させることも憲法37条3項に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
「公平な裁判所」の意義について「組織的公平」を強調するリーディングケースである。答案上は、裁判官の除斥・忌避や裁判員の選任手続、あるいは裁判所の独立性が問題となる場面で規範として引用する。また、訴訟費用の被告人負担(刑訴法181条1項)の合憲性を支える根拠としても重要である。
事件番号: 昭和26(あ)3208 / 裁判年月日: 昭和27年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、組織構成において偏頗(へんぱ)のおそれのない裁判所を意味し、裁判官の具体的な判断内容や量刑の当否をもって直ちに同条項違反となるものではない。 第1 事案の概要:被告人Aらに対し、第一審および控訴審において有罪判決が下された。これに対し被告人側は、第一審公判…