判旨
刑事訴訟法301条に規定する「被告人の自白を証拠とするには、犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後でなければならない」との要件は、すべての補強証拠が取り調べられた後であることを意味するものではない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法301条が定める自白の取調べ順序に関し、「犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後」とは、すべての補強証拠の取調べが終了していることを要するのか。
規範
刑事訴訟法301条(自白の取調べ順序)における「犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられた後」とは、被告人の自白の証拠能力や証明力を争うための前提として、客観的な証拠が先行して提示されるべきという趣旨であり、事件に関するすべての補強証拠の取調べが完了していることまでを要求するものではない。
重要事実
被告人は、第一審判決において有罪とされたが、その過程で被告人の自白が証拠として取り調べられた。上告人は、自白の取調べが刑事訴訟法301条に違反すると主張した。具体的には、すべての補強証拠が取り調べられる前に自白の取調べが行われたことが、同条の規定する順序に反し、憲法違反を招くものであると論難した。
あてはめ
刑事訴訟法301条は、自白の偏重を防止し、裁判官に予断を与えないための手続的規定である。本件において、上告人はすべての補強証拠の取調べ完了を要件とするよう主張するが、同条の文言および趣旨に照らせば、一部であっても「他の証拠」が取り調べられていれば足りると解される。したがって、すべての補強証拠の取調べを待たずに自白の取調べに入ったとしても、同条に違反するものではない。
結論
被告人の自白の取調べ順序に関し、すべての補強証拠が取り調べられた後であることを要しない。本件の上告趣旨は理由がなく、憲法違反の余地もない。
実務上の射程
証拠調べの順序に関する実務上の指針となる。実務上は、自白の取調べ前に、少なくとも犯罪の客観的事実(客観的な構成要件該当事実)を推認させるに足りる証拠が取り調べられていれば、301条の要件を満たすと解される。答案上は、証拠調べ順序の違法を論じる際の限定解釈として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1370 / 裁判年月日: 昭和26年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟における犯罪事実の認定が証拠によらず単なる推定に基づくものであるとの主張は、憲法31条違反の形式をとっても実質的には証拠裁判主義(刑訴法317条)違反の主張であり、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、第一審判決が証拠に基づかず単なる推定によって犯罪事実を認定したこと…