判旨
上告趣意が原審の認定しない事実を前提として憲法違反や判例違反を主張するものである場合、その主張は前提を欠き、適法な上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
原審が認定していない事実を前提として憲法違反や判例違反を主張することが、刑事訴訟法上の適法な上告理由となるか。
規範
上告理由の適否は、原判決が確定した事実を基礎として判断されるべきである。原判決の認定にない事実を前提として憲法違反(刑訴法405条1号)や判例違反(同条2号)を主張することは、上告理由としての不備にあたり、適法な理由にならない。
重要事実
被告人が憲法違反および判例違反を理由に上告を申し立てた。しかし、弁護人が主張する事由は、いずれも原審(控訴審)が認定していない独自の事実関係を基礎とするものであった。
あてはめ
弁護人の主張は、原審の認定を争うものではなく、原審が認定していない事実を前提として憲法・判例違反を導き出そうとするものである。このような主張は前提を欠くものであり、実質的に原判決の法的判断を争う形をなしていない。また、記録を精査しても刑訴法411条(判決の破棄)を適用すべき事由も認められない。
結論
本件上告は不適法であり、棄却を免れない。
実務上の射程
司法試験等の答案作成において、事実認定の誤り(事実誤認)は原則として上告理由にならないことを踏まえ、憲法違反等の主張をする際にも原審の事実拘束性があることを示す文脈で使用する。実務上は、実質的な事実誤認の主張を憲法違反等の形式に「粉飾」しても、認定事実に反する限り門前払いされることを意味する。
事件番号: 昭和25(あ)3076 / 裁判年月日: 昭和27年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、原審の事実認定や法令解釈の妥当性を肯定し、独自の法律論に基づく事実誤認や法令違反の主張は刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないと判断したものである。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件について有罪判決を受け、控訴審においても原判決が正当として維持された事案である。弁護人は、独自の法律論…