判旨
所持の罪において、一旦成立した所持が爾後存続するためには、その所持人が常にその物を所持することを意識している必要はない。
問題の所在(論点)
禁制品の「所持」を処罰する罪において、所持の開始後に所持人が意識を喪失した場合、所持の継続性が否定されるか。所持の存続における主観的意識の要否が問題となる。
規範
「所持」とは、物件に対して保管につき支配関係を開始し、これを持続する行為をいう。一旦成立した所持が継続するためには、所持人が常にその物件の存在を意識している必要はなく、客観的な支配関係が維持されている限り、心理的要素の有無を問わず所持の継続が認められる。
重要事実
被告人が、禁制品の所持を開始した後、進行性麻痺等の病状により意識を失った。弁護人は、意識を喪失した時点をもって所持の継続が否定されるべきであり、意識喪失後の所持を認めた原判決は判例に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人は当初、物件に対する支配関係を開始しており、所持が一旦成立している。その後、被告人が進行性麻痺等により意識を失ったとしても、一旦成立した所持の存続に常に意識が必要とされるわけではない。したがって、客観的な支配関係が断絶したとみるべき特段の事情がない限り、意識喪失後も所持の継続は認められる。判決文からは具体的な客観的支配状況の詳細は不明だが、意識の欠如のみをもって直ちに支配関係が消滅したとはいえない。
結論
被告人が意識を失った後も、一旦成立した所持は当然には否定されず、依然として所持の罪が成立し得る。
実務上の射程
所持罪(覚醒剤取締法や銃刀法等)における「所持」の継続性を論じる際の重要判例である。睡眠中や一時的な忘却、意識不明状態であっても、客観的・場所的な支配が及んでいる限り、所持の継続を肯定する根拠として用いることができる。特に「一旦成立した所持」の存続という文脈で活用すべきである。
事件番号: 昭和25(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
照準が破棄されていても拳銃の発射機能がないとはいえないし、また、弾丸が伴わなくとも鉄砲所持禁止令違反たるを免れないこと多言を要しない。
事件番号: 昭和26(あ)5111 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、…
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和24(れ)255 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 破棄差戻
按ずるに原判決は本件拳銃の「主要部分の不足、破損あるにおいては彈丸發射の機能を有しないものといわなければならない從つて右拳銃は銃砲等所持禁止令第一條同令施行規則第一條にいわゆる銃砲に當らない」と判示しただけで判示拳銃は容易に修繕し得るものなりや否やの點について判斷を示していない、思うに原審においては犯行當時所持していた…