判旨
上告理由が単なる法令違反にとどまる場合であっても、量刑が法定刑の範囲内であり、一罪に対する刑として不当に重いといえないときには、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない。
問題の所在(論点)
刑訴法405条の上告理由に当たらない法令違反の主張がある場合に、最高裁判所が刑訴法411条を適用して職権で原判決を破棄すべき「著しく正義に反する」事態に該当するか否か。
規範
刑訴法411条に基づく職権破棄が認められるためには、原判決に法令違反等の事由が存在するだけでなく、その違反を放置することが「著しく正義に反する」と認められる必要がある。具体的には、宣告された刑罰が法定刑の範囲内であり、かつ事案の性質に照らして過重でない場合には、正義に反するとはいえない。
重要事実
被告人は酒密造の罪に問われ、第一審において懲役1年(執行猶予3年)及び罰金2万円の判決を受けた。弁護人は原判決に法令違反があるとして上告したが、その内容は刑訴法405条の上告理由に該当しない単なる法令違反であった。
あてはめ
被告人に言い渡された懲役1年及び罰金2万円という刑は、酒密造罪の法定刑の範囲内である。また、本件酒密造の態様や諸般の事情を考慮しても、この量刑は一罪に対するものとして必ずしも重きに失するとは考えられない。したがって、仮に弁護人が主張するような法令違反が原判決に存在したとしても、直ちに正義に反する事態とは評価できない。
結論
本件上告は適法な理由を欠き、かつ職権破棄の必要性も認められないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑訴法411条の職権破棄事由の解釈において、量刑の妥当性が「著しく正義に反するか」の重要な判断指標となることを示した。実務上、上告理由に該当しない主張を行う際、いかなる場合に職権発動を期待できるかの限界点を示唆する。
事件番号: 昭和25(あ)1557 / 裁判年月日: 昭和26年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない訴訟法上の違法のみを主張する場合や、職権調査の必要性が認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が虚無の証拠により事実を認定したこと、または不適法に作成された検定調書を罪証に供したという訴訟法上の違法を理由として上告を…