死刑そのものは憲法第三六條にいわゆる「殘虐な死罰」に該らず且つ裁判官が、各具体的案件に對して、法律において許された範圍内で刑を量定した場合に、かりに被告人の側から見て過重な刑と思われる場合でも必ずしもこれをもつて、右憲法にいわゆる「殘虐な刑罰」というべきものでないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一一九號、同年三月一二日大法廷判決、同二二年(れ)第三二三號、同二三年六月二三日大法廷判決参照)本件の科刑をもつて所論のごとく、「殘虐な刑罰に」あたるものとすべきでないことは、右判例の趣旨に徴して明らかである。
死刑の合憲性
憲法36條
判旨
死刑そのものは憲法36条にいう「残虐な刑罰」には該当しない。また、裁判官が法律の範囲内で刑を量定した場合、被告人から見て過重であっても直ちに同条違反とはならない。
問題の所在(論点)
死刑制度そのものが憲法36条の「残虐な刑罰」に該当し、違憲となるか。また、具体的な量刑が被告人にとって過重である場合に「残虐な刑罰」に該当するか。
規範
1. 憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」とは、刑罰の性質そのものが人道上の残酷性を有するものを指し、死刑そのものはこれに該当しない。 2. 裁判官が具体的案件において、法律の定める範囲内で刑を量定した場合には、たとえ被告人にとって過重に思われる量刑であっても、当然に憲法36条に違反するものではない。
重要事実
被告人A及びBは、原審において死刑等の判決を受けた。被告人Bの弁護人は、警察官による不当な取扱い(自白強制等)があったこと、及び原審が認定した事実に基づく科刑が重すぎることを理由として、当該科刑が憲法36条の「残虐な刑罰」に該当し憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
1. 死刑制度について:最高裁判所の判例(昭和23年3月12日大法廷判決等)に基づき、死刑そのものは人道的見地から見て直ちに憲法36条の「残虐な刑罰」には当たらないと判断される。 2. 個別の量刑について:本件において、裁判官が法律の許容する範囲内で刑を量定している以上、被告人側の主観において過重であるとの主張があっても、客観的に「残虐な刑罰」としての評価を受けるものではない。したがって、原審の認定事実に照らした本件の科刑は憲法に反しない。
結論
死刑は憲法36条の「残虐な刑罰」には該当せず、また、法定刑の範囲内で行われた量刑は、被告人にとって過重であっても同条違反とはならない。上告棄却。
実務上の射程
死刑制度の合憲性を支えるリーディングケースの一つ。答案上では、死刑の合憲性や刑罰の残虐性が争点となる場合に、憲法36条の解釈基準(性質上の残虐性と量刑の妥当性)を提示するために引用する。ただし、現代の答案構成では「公共の福祉(12条、13条)」との関係を説く昭和23年大法廷判決の方がより一般的に用いられる点に留意が必要。
事件番号: 昭和28(あ)997 / 裁判年月日: 昭和28年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は、日本国憲法第36条が禁止する「残虐な刑罰」には当たらない。過去の大法廷判決の判例を維持し、死刑の合憲性を認めるべきである。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、第一審・第二審において死刑の判決を受けた。これに対し弁護人は、死刑は憲法36条が禁止する残虐な刑罰に該当するものであり、死刑を…