一 被告人が原審相被告人A等と本件強盜をすることを共謀したものと認定され得る以上、被告人が、犯行現場において屋外で見張をしてをり、屋内に侵入した共謀者が如何なる暴行脅迫をなし、如何なる財物を強取したかをその當時知らなかつたとしても、又その贓物の分配を受けなかつたとしても、なお被告人は本件強盜の共同正犯である。 二 「保釋後四ケ月以上を經過した後に公判廷においてなされた自白は憲法第三八條第二項に所謂不當に長い拘禁後の自白ということはできない。」のである。(昭和二三年(れ)第三九七號事件同年七月二九日判決、判例集第二巻第九號一〇七八頁参照)
一 屋外の見張りと強盗の共同正犯 二 保釋後四ケ月以上經過後の公判廷における自白と不當に長い拘禁後の自白
刑法60條,刑法236條1項,憲法38條2項
判旨
共謀者が実行行為を行っている際、屋外で見張りを行い、実行行為の具体的詳細を知らず、かつ盗品等の分配を受けなかったとしても、共謀が認められる限り、刑法60条の共同正犯が成立する。また、保釈後4か月以上経過した後の公判廷における自白は、憲法38条2項にいう「不当に長い拘禁後の自白」には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 実行行為の具体的詳細の不知や利益分配の欠如が、共同正犯の成立を妨げるか。2. 保釈から相当期間経過後になされた公判廷での自白が、憲法38条2項の「不当に長い拘禁後の自白」として証拠能力を否定されるか。
規範
特定の犯罪を遂行する共謀が認められる以上、犯行現場において屋外で見張りをし、屋内に侵入した共謀者が行った具体的な暴行・脅迫の内容や強取した財物の詳細をその当時知らず、かつ賍物(盗品等)の分配を受けていなかったとしても、なお当該犯罪の共同正犯(刑法60条)としての責任を負う。
重要事実
被告人は、共犯者らと強盗を行うことを共謀した。実行時、被告人は屋外で見張り役を務めており、屋内に侵入した共犯者らが具体的にどのような暴行・脅迫を行い、どのような財物を強奪したかを当時は知らなかった。また、犯行後に強奪した財物の分配も受けていなかった。一審判決後、被告人は保釈され、保釈から4か月以上経過した後の原審公判廷において、犯行事実を認める供述(自白)を行った。
事件番号: 昭和23(れ)154 / 裁判年月日: 昭和23年5月6日 / 結論: 棄却
一 本件上告人から判示強盗罪の外この手段的經過事實に對し、更に住居侵入罪の成立を主張し、その法律適用を請求する本論旨は、結局自己の不利益の爲原判決の破毀を求めるものに外ならないから、被告人の利益の爲にする本件上告適法の理由とならない。 二 公判調書に引用された他の書類の記載と相俟つて被告人が公判廷で判示同趣旨の供述をし…
あてはめ
1. 被告人と共犯者との間に本件強盗に関する共謀が認められる以上、役割分担として屋外での見張りを担当したに過ぎない事実は共同正犯の成立を左右しない。現場での詳細な状況把握や事後の利得の有無は、共謀に基づく実行行為の一部を分担したという評価を妨げるものではない。 2. 被告人は公判廷での自白時、既に保釈から4か月以上経過しており、身体的拘束から解放された状態での心理的安定が確保されていたといえる。したがって、当該自白が不当な抑圧下でなされたものとは認められない。
結論
被告人に強盗罪の共同正犯が成立する。また、保釈後4か月を経過した後の公判廷での自白は、憲法38条2項に反せず証拠能力を有する。
実務上の射程
共謀共同正犯における実行行為の分担(見張り)と主観的認識の範囲、および憲法上の自白排除法則に関する初期の重要判例。現場共謀がある場合の見張り役の責任範囲を画定する際や、拘禁と自白の因果関係を否定する際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和23(れ)425 / 裁判年月日: 昭和23年7月22日 / 結論: 棄却
一 日本刀を携帯して強盗することを共謀し、その見張をした者は、その日本刀を嘗て手にしたことがなくても、銃砲等所持禁止令違反の共同正犯である。 二 數人が強盜の實行を共謀し、そのうち一人が屋外の見張りをしただけであつても、他の共犯者の實行行爲を介して自己の犯罪敢行の意思を實現したものと認められる場合には、なお強盜の共同正…
事件番号: 昭和24(れ)2210 / 裁判年月日: 昭和25年1月19日 / 結論: 棄却
強盜の共謀をした者はたとい自ら暴行脅迫強取等の強盜等行爲を分擔しなくても、他の共謀者がした右強盜等行爲によつて自己の犯罪遂行の意志を實現したものと認められる以上なお共同正犯としての罪責を免れる事のできないものであることは常裁判決屡次の判決に示すとおりであるからたとい被告人において右強盜行爲を分擔しなかつたとしても判示の…
事件番号: 昭和24(れ)2793 / 裁判年月日: 昭和25年2月2日 / 結論: 棄却
一 被告人及び原審相被告人Aが逮捕され更に勾留状によつて身体の自由を拘束されてから所論檢事の聽取書が作成されるに至る迄に八〇餘日を經過していることは所論の通りである。しかし記録によれば、被告人等兩人は逮捕されて十余日後における司法警察官の取調に對して犯罪事實を自供しているのであつて、所論檢事の聽取書の兩名の自白は右司法…