一 日本刀を携帯して強盗することを共謀し、その見張をした者は、その日本刀を嘗て手にしたことがなくても、銃砲等所持禁止令違反の共同正犯である。 二 數人が強盜の實行を共謀し、そのうち一人が屋外の見張りをしただけであつても、他の共犯者の實行行爲を介して自己の犯罪敢行の意思を實現したものと認められる場合には、なお強盜の共同正犯たるの責を兔れない。
一 日本刀を携帯して強盗することを共謀して見張をした者の日本刀不法所持についての責任 二 屋外の見張りと強盜の共同正犯
銃砲等所持禁止令1条,刑法60条,刑法236條1項
判旨
共謀した共犯者が、現場で実行行為に直接加担せず見張りを行ったに留まる場合であっても、他の共犯者を介して自己の犯罪意思を実現したと認められれば、共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
実行行為の一部(日本刀の携帯・使用)を直接行っていない見張り役について、銃砲等所持禁止令違反(現・銃刀法違反に相当)の共同正犯が成立するか。
規範
犯罪の敢行を謀議した共犯者は、たとえ現場で実行行為に直接加担せず見張りを行ったに留まる場合であっても、他の共犯者の実行行為を介して「自己の犯罪敢行の意思を実現したもの」と認められる場合には、刑法60条の共同正犯としての責任を負う。
重要事実
被告人は、共犯者Aから日本刀を用いて他人の金品を強奪しようと誘われ、これに同意して共謀した。Aは、法定の除外事由がないにもかかわらず日本刀を携帯して住宅に侵入し、家人に抜身を突きつけ「騒ぐと斬るぞ」などと脅迫して強盗(一部未遂)を敢行した。この間、被告人は屋外で見張りを行っていた。被告人自身は、当該日本刀を一度も手に持ったことはなかった。
事件番号: 昭和23(れ)154 / 裁判年月日: 昭和23年5月6日 / 結論: 棄却
一 本件上告人から判示強盗罪の外この手段的經過事實に對し、更に住居侵入罪の成立を主張し、その法律適用を請求する本論旨は、結局自己の不利益の爲原判決の破毀を求めるものに外ならないから、被告人の利益の爲にする本件上告適法の理由とならない。 二 公判調書に引用された他の書類の記載と相俟つて被告人が公判廷で判示同趣旨の供述をし…
あてはめ
被告人は、Aと日本刀を使用した強盗を企てて共謀しており、Aが日本刀を携帯・使用して脅迫を行うという行為は、被告人の犯罪意思の範囲内にある。被告人が屋外で見張りをしていた事実は、Aの実行行為を容易にし、共謀に基づき共同して犯罪を実現しようとしたものといえる。したがって、被告人自身が日本刀を手にしていなくとも、共犯者Aの行為を介して「自己の犯罪敢行の意思を実現したもの」と評価される。
結論
被告人は、直接日本刀を携帯していなくとも、Aの行為を介して自己の意思を実現したといえるため、銃砲等所持禁止令違反の共同正犯としての責任を負う。
実務上の射程
共謀共同正犯(または実行行為を分担した共同正犯)の成立根拠として「相互利用補充関係」を認めるリーディングケースである。特に所持罪のような身分的・状況的要素が強い罪名においても、共謀があれば実行行為を直接行っていない者に正犯性を認められることを示す。
事件番号: 昭和24(れ)2210 / 裁判年月日: 昭和25年1月19日 / 結論: 棄却
強盜の共謀をした者はたとい自ら暴行脅迫強取等の強盜等行爲を分擔しなくても、他の共謀者がした右強盜等行爲によつて自己の犯罪遂行の意志を實現したものと認められる以上なお共同正犯としての罪責を免れる事のできないものであることは常裁判決屡次の判決に示すとおりであるからたとい被告人において右強盜行爲を分擔しなかつたとしても判示の…
事件番号: 昭和24(れ)865 / 裁判年月日: 昭和24年9月22日 / 結論: 棄却
一 被告人が原審相被告人A等と本件強盜をすることを共謀したものと認定され得る以上、被告人が、犯行現場において屋外で見張をしてをり、屋内に侵入した共謀者が如何なる暴行脅迫をなし、如何なる財物を強取したかをその當時知らなかつたとしても、又その贓物の分配を受けなかつたとしても、なお被告人は本件強盜の共同正犯である。 二 「保…
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。