原審の認定した被告人の本件犯罪は五つの詐欺罪と一つの窃盜とであつて、その犯罪の態様から見ても、必ずしも辯護人の主張するように原審の科刑が非常に苛酷の刑であると云うことはできないそして「事實審の裁判官が普通の刑を法律において許された範圍内で量定した場合において、それが被告人の側から觀て過重の刑であるとしても、憲法にいわゆる殘虐な刑罰と呼ぶことはできない」と云うことは當裁判所の判例とするところであるから、原判決は所論のように憲法の精神に反するものではない。(昭和二三年(れ)第三二三號同二三年六月三〇日大法廷判決)
苛酷の刑であるという主張と憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」
憲法36條
判旨
刑法42条1項の自首による刑の減軽は裁判所の任意的裁量に委ねられており、減軽しないことも許容される。また、法定刑の範囲内で行われた量刑が被告人にとって過重であっても、直ちに憲法36条の残虐な刑罰には当たらない。
問題の所在(論点)
1.自首の事実が認められる場合に、裁判所は必ず刑を減軽しなければならないか。2.情状に関する取調べが不十分であるとして審理不尽の違法が認められるか。3.法定刑の範囲内での量刑が「残虐な刑罰」として憲法違反となり得るか。
規範
自首(刑法42条1項)に基づく刑の減軽は「することができる」と規定されており、これを適用するか否かは裁判所の自由裁量に属する。また、量刑において考慮すべき情状の取調べの範囲も事実審の裁量に委ねられる。さらに、法定刑の範囲内で言い渡された刑罰は、被告人にとって過重であっても憲法上の「残虐な刑罰」には該当しない。
重要事実
被告人は、5件の詐欺罪および1件の窃盗罪に問われた。そのうち4件の詐欺罪については、捜査機関に発覚する前に自首した事実が認められていた。しかし、原審は自首減軽を適用せず、また被告人の動機(かつて患った天狗熱の影響で家出や犯行に及ぶ等の事情)や性格について一定の取調べを行った上で刑を量定した。被告人側は、自首減軽をしないことの違法性、審理不尽、および量刑が過酷であり憲法に違反することを主張して上告した。
あてはめ
1.刑法42条1項の規定によれば、自首による刑の減軽は裁判所の任意的な裁量事項である。したがって、自首の事実が認められる場合であっても、原審がその減軽を行わなかったことに違法はない。2.原審は公判廷において、家庭の事情や犯行の動機、入手した金の使途等について取調べを行っている。被告人の人物や性格は法廷での態度や犯行態様からも心証を得られるものであり、どの程度の取調べを行うかは事実審の裁量であるから、本件の審理に不足はない。3.量刑は5つの詐欺と1つの窃盗という犯罪態様に照らし、法律が許容する範囲内で行われており、著しく苛酷とはいえない。判例に照らし、法定刑の範囲内の刑は「残虐な刑罰」に該当しない。
結論
自首減軽の不適用や量刑の不当を理由とする上告は認められない。原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
自首の成立要件(自己の犯罪事実の申告等)を満たしても、減軽の適用は裁判所の専権事項であることを示す。答案上、刑法42条の適用の有無が問題となる場面で、必要的減軽ではなく任意的減軽であることの論拠として利用できる。また、量刑不当が直ちに憲法違反(残虐な刑罰)を構成しないという一般論を確認する際にも有用である。
事件番号: 昭和41(あ)2421 / 裁判年月日: 昭和42年2月20日 / 結論: 棄却
A窃盗事実について逮捕勾留中の被疑者が、BないしEの窃盗の各事実について、犯人の何人たるかは勿論、犯罪事実さえ全く官に発覚していない時期に、自発的に供述した時は自首が成立する。