職權を以て調査するに、記録によれば、昭和二三年一二月六日原審第四回公判において被告人は原判決の言渡に對し、即時上訴權を放棄する旨申立てたものであるにかかわらず、原審辯護人Aは、右被告人の明示した意思に反して同年同月八日本件上告を爲したものであること明白である。從つて本件上告は不適法たるを兔れない。
上訴を放棄する旨の被告人の明示した意思に反して辯護人のなした上告の適否
舊刑訴法379條,舊刑訴法382條
判旨
弁護人は、被告人の明示した意思に反して上訴を提起することはできず、被告人が上訴権を放棄した後に弁護人が行った上訴は不適法である。
問題の所在(論点)
被告人が上訴権を放棄するという明示した意思表示を行っている場合に、弁護人がその意思に反して上訴を提起することができるか(弁護人の上訴権と被告人の意思の優先関係)。
規範
弁護人の上訴権は、被告人の上訴権を保護するための固有の権利として認められるが、被告人の意思を尊重する観点から、被告人の明示した意思に反してこれを行使することはできない(旧刑事訴訟法、現行刑事訴訟法355条・356条参照)。
重要事実
被告人は、原判決の言い渡しに対し、公判廷において即時に上訴権を放棄する旨の意思表示を行った。しかし、被告人の弁護人は、被告人の右明示した意思に反して、上告を提起した。
あてはめ
被告人が公判において「即時上訴権を放棄する旨申し立てた」事実は、被告人による上訴を行わないという確定的な意思表示であるといえる。これに対し、弁護人がその後に行った上告は「被告人の明示した意思に反して」なされたものであることが明白である。したがって、被告人の意思が優先されるべきであり、弁護人の上訴権行使は許容されない。
結論
弁護人による本件上告は、被告人の明示した意思に反するものであり不適法であるため、棄却を免れない。
実務上の射程
現行刑事訴訟法356条において「被告人の明示した意思に反してこれをすることができない」と明文化されており、本判決はその趣旨を確認するものである。被告人が上訴権を放棄・取下げした場合には、弁護人の独立上訴権は消滅する(または行使できない)という答案構成に用いる。
事件番号: 昭和26(れ)777 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、弁護人の上告趣意に刑事訴訟法405条所定の上告理由がなく、かつ、記録を精査しても同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が、原判決に対して上告を申し立てた事案である。判決文の記載からは、具体的な公訴…
事件番号: 昭和24(つ)81 / 裁判年月日: 昭和24年7月27日 / 結論: 棄却
原決定は被告人の死亡により本件公訴を棄却したものであるから、これに對しては、被告人又は原審辯護人からは、上訴をすることができないものといわなければならない。