原審に於て辯護人から證人としてAの訊問を申請したのに對し、その訊問の機會を與えることに著しい困難があつたとは認められないにも拘わらず、原審は右の申請を却下し、しかも同人に對する司法警察官代理聽取書中の同人の陳述記載を證據として、採用し、これを他の證據と綜合して本件犯罪事實を認定したものであること所論の通りである。このような審理の手續が刑訴應急措置法第一二條第一項及び憲法第三七條第二項に違反するものであることは、既にしばしば當裁判所の判例に示されている通りである。(昭和二二年(れ)第八四號同二二年四月二一日言渡大法廷判決、昭和二三年(れ)第五二三號同年一一月五日言渡大法廷判決参照)
刑訴應急措置法第一二條第一項違反の一場合
憲法37條2項,刑訴應急措置法12條1項
判旨
被告人に反対尋問の機会を与えることが著しい困難でないにもかかわらず、証人尋問の申請を却下し、かつ供述録取書を証拠採用して有罪判決を下すことは、憲法37条2項に違反する。
問題の所在(論点)
被告人が申請した証人の尋問を行わず、その者の供述録取書を証拠として有罪判決を下すことが、憲法37条2項および刑訴応急措置法12条1項に違反するか。
規範
憲法37条2項が保障する「すべての証人に対して審問する機会」を実質的に担保するため、証人尋問の機会を与えることに著しい困難が認められない場合には、被告人側の証人尋問申請を却下し、かつ当該供述者の書面を証拠として採用することは許されない。
重要事実
被告人側は原審においてAの証人尋問を申請したが、裁判所は、Aの尋問を行うことに著しい困難が認められない状況であったにもかかわらず、この申請を却下した。その一方で、裁判所は司法警察官代理が作成したAの陳述録取書を証拠として採用し、他の証拠と総合して犯罪事実を認定し有罪判決を言い渡した。
あてはめ
本件では、証人Aの尋問を行うことに特段の支障や著しい困難があったとは認められない。それにもかかわらず、原審は弁護人側の尋問申請を却下している。この手続は、被告人に証人と対決して審問する機会を正当な理由なく奪うものであり、対審における防御権の侵害にあたるといえる。さらに、尋問を拒否しながらその者の供述書を証拠採用する行為は、憲法の要請する適正な証拠調べ手続を逸脱していると解される。
結論
本件審理手続は憲法37条2項に違反するため、原判決は破棄を免れず、審理を差し戻すべきである。
実務上の射程
伝聞例外(現行法では321条各項等)の適用を検討する際、単に形式的要件を満たすだけでなく、憲法上の反対尋問権の保障の観点から、被告人に尋問の機会を十分に与えたかという適正手続の視点を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1663 / 裁判年月日: 昭和25年6月28日 / 結論: 棄却
一 衆議院議員選舉法第一一四條は、當選を得る目的をもつて、選舉人又は選舉運動者に對し金錢その他の財産上の利益が供與せられた場合について「收受シ……タル利益ハ之ヲ没收ス」と規定しているのであつて、同條は「利益收受者」に對する刑として没收刑を規定しているのである。しかるに、原判決が没收を言渡した押收の金八〇〇圓は被告人が判…
事件番号: 昭和25(れ)1830 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴応急措置法13条2項に基づき、原審における事実誤認や量刑不当の主張は、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBの弁護人は、原審の判決において事実の誤認があること(上告趣意第1点)、および被告人らに対する原審の量刑が不当であること(上告趣意第2点)を理由として上告を申し…