刑訴法二二七条二二八条に基づき、被告人及び弁護人に立会の機会を与えることなく証人尋問調書が作成されたのち、当該証人が死亡したため、第一審が、検察官の請求により、同法三二一条一項一号により右証人尋問調書を証拠として採用したため、結局、被告人は証人尋問調書について証人を反対尋問する機会を与えられずに終ったとしても、憲法三七条二項、三項に違反するものでないことは、最高裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八三三号同二四年五月一八日大法廷判決・刑集三巻六号七八九頁、昭和二五年(し)第一六号同年一〇月四日大法廷決定・刑事四巻一〇号一八六六頁、昭和二六年(お)第二三五七号同二七年四月九日大法廷判決・刑集六巻四号五八四頁)の趣旨に照らし明らかである。
刑訴法二二七条一項二二八条二項に基づき被告人及び弁護人に立会の機会を与えず作成された証人尋問調書を同証人の死亡を理由に同法三二一条一項一号により証拠として採用することと憲法三七条二項三項
憲法37条2項,憲法37条3項,憲法37条1項1号,刑訴法228条2項,刑訴法321条
判旨
憲法37条2項は、供述者の死亡等により反対尋問の機会を与え得ない場合に、公判外の供述を録取した書面を証拠とすることを禁止するものではない。
問題の所在(論点)
供述者が死亡し、被告人に反対尋問の機会が与えられないまま、刑訴法321条1項1号に基づき公判外の供述調書を証拠とすることが、憲法37条2項(証人審問権・対質権)および3項(弁護権)に違反するか。
規範
憲法37条2項は、被告人に反対尋問の機会を与えない証人の供述録取書面を証拠とすることを絶対的に禁じているわけではない。供述者の死亡その他、裁判所における尋問を妨げるやむを得ない事由があり、そのため被告人に反対尋問の機会を与え得ない場合には、当該書面を証拠として採用しても同項及び同条3項に違反しない。
重要事実
被告人の事件において、証人Aが刑訴法227条、228条に基づき裁判官による証人尋問を受けた。その後、証人尋問調書が作成されたものの、第一審の公判段階で証人Aが死亡した。検察官は刑訴法321条1項1号に基づき、当該証人尋問調書の証拠採用を請求し、裁判所はこれを証拠として採用した。被告人側は、反対尋問の機会が与えられないまま証拠採用されたことは憲法37条2項、3項に違反すると主張した。
あてはめ
本件では、証人Aが証人尋問調書の作成後に死亡しており、公判廷において尋問することが不可能となっている。これは、被告人に反対尋問の機会を与え得ない「やむを得ない事由」にあたる。したがって、刑訴法321条1項1号の要件を満たし、同調書を証拠として採用することは、被告人に反対尋問の機会が実質的に失われていたとしても、憲法37条2項・3項に違反するものではないといえる。
結論
憲法37条2項・3項に違反しない。刑訴法321条1項1号による証拠採用は適憲である。
実務上の射程
伝聞例外規定(刑訴法321条等)が合憲である根拠として重要。反対尋問権は絶対的なものではなく、死亡等の客観的不能がある場合には制限され得ることを示す。答案では、伝聞例外の要件充足性を論じた後、憲法適合性が問題となる場面で本判例の論理を引用する。
事件番号: 昭和30(あ)88 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官面前調書の証拠能力を認める刑事訴訟法321条1項2号後段は、憲法37条2項の証人尋問権(反対尋問権)に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBの公判において、検察官面前調書が証拠として採用された。これに対し、弁護人は刑事訴訟法321条1項2号後段の規定が、被告人の反対尋問権を保障した…