判旨
憲法37条2項は反対尋問の機会がない供述書面の証拠能力を絶対的に否定するものではなく、共犯関係にある者を被疑者以外の者(証人)として尋問することは適法である。
問題の所在(論点)
1. 共犯者を「被疑者以外の者」として証人尋問することの可否(刑訴法223条1項の「被疑者」の意義)。 2. 反対尋問の機会が制限された可能性のある証人調書の証拠能力と憲法37条2項の関係。
規範
1. 憲法37条2項は、反対尋問の機会を与えない証人その他の者の供述を録取した書類を絶対に証拠とすることができないという意味を含むものではない。 2. 刑訴法223条1項にいう「被疑者」とは当該被疑者本人を指し、共犯関係にある他の者は含まれない。したがって、共犯者を被疑者以外の者として証人尋問(刑訴法226条等)の手続きに付すことは適法である。
重要事実
被告人が公職選挙法違反(買収等)に問われた事案において、検察官が共犯関係にあるAを「被疑者以外の者」として裁判官による証人尋問(刑訴法228条に基づくものと推察される)を請求し、その供述録取書が作成された。第一審の公判において、当該証人Aは複数回にわたり尋問を受け、被告人側による反対尋問の機会も与えられた。弁護人は、共犯者Aを証人として尋問したこと、およびその証人調書を証拠としたことが憲法37条2項、3項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
1. 刑訴法223条1項の「被疑者」は、捜査の対象となっている当該本人に限定される。共犯者は他人の被告事件との関係では第三者であるから、これを「被疑者以外の者」として証人尋問の手続きに付した判断は相当である。 2. 本件では、証人Aは第一審の公判廷(第5回、6回、24回)において実際に尋問されており、被告人側には反対尋問の機会が十分に保障されていた。さらに、第24回公判では問題となっている証人調書の内容についても尋問が及んでいる。したがって、憲法が保障する対質尋問権を侵害したとは認められない。
結論
共犯者は「被疑者以外の者」に含まれるため証人尋問が可能であり、公判廷において反対尋問の機会が与えられている以上、当該証人調書を証拠とすることは憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
1. 共犯者の証人適格および証言拒絶権に関する論証において、刑訴法223条1項の「被疑者」の意義を限定する際の根拠として活用できる。 2. 伝聞例外(刑訴法321条1項2号等)の合憲性を論じる際、憲法37条2項が絶対的な反対尋問の保障を求めているわけではないことを示す基本判例として引用する。
事件番号: 昭和48(あ)1552 / 裁判年月日: 昭和49年3月5日 / 結論: 棄却
一 第一審公判廷において証人として尋問され、被告人側に反対尋問の機会が充分に与えられたときは、右公判廷において同証人が裁判官の面前における供述と異なる供述をしたため、刑訴法三二一条一項一号により、同法二二七条一項、二二八条二項に基づき被告人側に立会の機会を与えずに作成した証人尋問調書を証拠として採用しても、憲法三七条二…