弁護人は刑訴規則第一六〇条第一項第七号は法律要件であるからこれを欠く証人申請書はその手続が違法だから却下さるべきであり、違法なる申請によつて開始された証人尋問もまた違法だからその調書は証拠能力を欠くと主張するが、刑訴法第二二八条第二項の弁護人の立会が裁判官の裁量によるものであり、また記録によれば所論証人尋問調書の証拠調請求に際し異議申立のなかつたことが明らかであるから、右の違法が直ちに右証人尋問請求手続、ひいてこれに基づく証人尋問手続および証人尋問調書の無効を来たすものではない。
刑訴法第二二七条による証人尋問請求において、刑訴規則第一六〇条第一項第七号の違反は証人尋問請求手続ないし証人尋問調書の効力を失わしめるか。
刑訴法227条,刑訴法228条2項,刑訴規則160条1項7号,刑訴規則162条
判旨
憲法37条2項は受訴裁判所の公判手続における証人審問権を保障するもので、捜査段階の証人尋問に当然に及ぶものではなく、裁判官による証人尋問調書の証拠採用も反対尋問の機会が確保されていれば同条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 捜査上の証人尋問(刑訴法226条、227条)において被告人・弁護人の立会を任意とする刑訴法228条2項は、憲法37条2項の証人審問権に違反するか。 2. 証人審問の機会がなかった捜査段階の裁判官面前調書を証拠採用することは憲法37条2項に違反するか。
規範
1. 憲法37条2項は、刑事被告人に対し、受訴裁判所の訴訟手続においてすべての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利を保障したものであり、捜査手続における保障規定ではない。 2. 刑事訴訟法228条2項が裁判官による証人尋問への立会を裁量としたことは、憲法37条2項に反しない。 3. 裁判官の証人尋問調書(刑訴法321条1項1号)につき、公判(又は公判準備)において被告人側に反対尋問の機会が与えられているのであれば、当該調書を証拠とすることは憲法37条2項に違反しない。
重要事実
検察官が刑訴法227条に基づき裁判官に証人尋問を請求し、裁判官が各証人を尋問して調書を作成した。被告人側は、当該尋問手続において弁護人の立会が認められなかった点や、刑訴規則160条1項7号に違反する点があるとして、当該調書の証拠能力を争い憲法37条2項違反を主張した。しかし、これらの証人は後に第一審の公判準備期日において尋問され、被告人側の反対尋問にさらされており、当該調書の内容についても尋問を受ける機会があった。
あてはめ
1. 憲法37条2項は公判手続上の権利を保障するものであり、強制捜査の一種である捜査段階の証人尋問手続に当然に適用されるものではない。したがって、立会を裁量とした刑訴法228条2項は違憲ではない。 2. 本件では、問題となった各証人は第一審の公判準備期日において出頭し、被告人側から反対尋問を受ける機会が十分に確保されている。証人尋問調書の内容についても争う機会が与えられていたといえるから、同調書を証拠として採用しても、被告人の証人審問権を実質的に侵害するものではない。
結論
刑訴法228条2項は合憲であり、公判等で反対尋問の機会が与えられている以上、裁判官面前調書の証拠採用は憲法37条2項に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
伝聞例外(刑訴法321条1項1号)の合憲性を支える根拠として重要。公判での反対尋問権が実質的に保障されていれば、捜査段階での立会機会が欠如していても証拠能力が認められるという判断枠組みを示す際に用いる。
事件番号: 昭和30(あ)88 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官面前調書の証拠能力を認める刑事訴訟法321条1項2号後段は、憲法37条2項の証人尋問権(反対尋問権)に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBの公判において、検察官面前調書が証拠として採用された。これに対し、弁護人は刑事訴訟法321条1項2号後段の規定が、被告人の反対尋問権を保障した…